03
あまり目立たないようにとジリジリと店の入口へと向かえば、どこか遠くからルフィの声が聞こえて…。
「やっほーう!!…ってナマエ!?そこ危ねェ!!退け…!!」
「は、ルフィ?何でそんな腕伸びて…えっ!?」
びよーんとまるでゴムみたいに伸びてきたルフィの腕。そしてすごいスピードでこっちに向かってくるルフィにビックリして、いきなり退けと言われても身体が動いてくれなかった。
ーーー…バチン!!
ルフィとわたしの身体がぶつかり、そのままの勢いで店の中にいた誰かに衝突し、吹っ飛ばされる。
「う、…。痛ぁ…ッ!」
ズキズキと身体が痛んで自然と涙が出る。
目を開けると、目の前には何重もの壁に穴が空いてるのが見えてゾクリと背筋が冷えた。
え、ちょっと待って。ルフィ、どれだけの力で飛んできたの?わたし、ちゃんと五体満足だよね?
「ー…んのヤローがどこのどいつだ…!」
ペタペタと自分の身体を触っていると下の方からそんな声が聞こえて、それを確認する前にいきなりフワリと身体が浮いた。
「大丈夫か?怪我は…って、ちっと頬切れてんな」
何故かわたしを抱き上げているのはあの食事中に寝てたテンガロンハットの男で、親指の腹でわたしの頬をグイグイと擦っている。
この人がクッションになってくれたお陰で身体が痛む程度で済んだみたい…とりあえずそんなに大怪我しなくて良かった。ルフィは後で怒る。ほんとに。
「ありがとう。もう大丈夫だから、下ろして」
「お、そうか?足元気をつけろよ」
彼はニッと笑って穴をくぐり、ビックリして固まっている人達に『お食事中失礼しました』と律儀に謝りながら元いたお店まで歩いていく。
その後をわたしもついていってお店に戻ると、ルフィが呑気にご飯食べててさすがのわたしもイラッときた。
テンガロンハットの彼の隣を通り過ぎてルフィに文句言ってやろうとその近くへ。
「ちょっとルフィ…、」
「ー…麦わらァ!!」
わたしの声は、鬼のような形相をした葉巻の男が飛ばした怒号により掻き消される。
何やらルフィと彼は顔見知りのようで、バクバクと食べ続けているルフィに話しかけていた。
「ナマエ!にへるほ…!!」
「え、なんて…うあっ!?」
しばらくその様子を見つめてたら、いきなり叫んだルフィが口の中に食べ物を押し込んで近くにいたわたしを小脇に抱えて店から全速力で逃げていく。
お腹を圧迫された状態でそんなに勢いよく走られたら…っ吐く、吐いちゃう。
身体に回るルフィの腕を叩くけど、さっきの葉巻の人に追いかけられてるみたいで全然気付いてくれない。
「ホワイトスネーク=I」
「っ!!おおお…っ!」
反対向きに抱えられてるからわたしには見えたけど、葉巻の彼の手が真っ白な煙に変化してこっちに猛スピードで飛んでくる。
あれもきっと悪魔の実の能力者なのだろうけど、あれに当たったら…どうなるんだろう。
そんな呑気なことを考えてるのが間違ってた。
相手に技を出されたことでルフィの逃げるスピードがギュン!と一気に上がっていく。
もうダメ、と意識が飛びそうになったその時。
「陽炎=v
「大凪=v
2つの声が聞こえたかと思えば、ルフィがやっと止まってくれた、けど。………ちょっと待って。今の、声は。
「変わらねェな、ルフィ」
「エース…!?」
ちがう。そっちじゃなくて、別の。
「ーー…ナマエ」
「……っ、ロシナンテ!」
やっと見つけた、そう言って涙目で笑う彼はわたしの大好きで愛しい人だった。
欠乏症の完治
(こんなにカッコよかったっけ)
(俺のフード被ってるのかわいすぎ)
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