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01




眩しい、そう思って目を開く。
一番最初に目に飛び込んできたのは、俺を見下ろす隻眼の女だった。


□ □ □



今の状況を理解しようにも、疑問ばかりが頭に浮かんで何も言葉が出てこない。

目の前にいる女は誰だ?
そもそも俺はあの時、ドジって海賊に撃たれてヴェルゴにボコボコにされて…ドフィに撃たれまくって死んだはずじゃねェのか?

自分が生きてることが信じられなさ過ぎて、それを確かめようと目の前の女のことも忘れて右手を心臓のある位置へと動かそうとした…が何故か動かない。


「おはよう、外国の人。あんたは何者かな?何でこの部屋にいるの?」


高くも低くもない耳に心地いいアルトの声。それは紛れもなく俺の上に跨っている女から発せられたもの。
その質問にどう返事をしようか考えながらキョロキョロと視線を動かすと、よく見たら四肢が縄で縛られてることに気がついた。

ここがどこかの部屋の中なのは分かる。
きっとこいつの部屋なんだろうが、自分が何者なのか答えられるにしても何でここにいるのかは俺が知りてェ。


「黙秘?それとも口がきけない?」
「………いや、喋れる」
「それなら良かった。じゃあさっきの質問に答えてもらえる?ああ、拘束してるのは申し訳ないとは思ったんだけど一応不法侵入者だし念の為ね」


ー…傷は治療してあげたから。
そう続けられた彼女の言葉に、目が飛び出るんしゃねェかってほど目を見開いた。

致命傷になるほどのあの傷を治療…!?
手を縛られてることなんか忘れて上半身を思い切り起き上がらせれば、俺の上にいた彼女のデコと俺のそれがゴチン!!と鈍い音を立てた。


「イ、ッテェ…っ!」
「…〜っ、痛…!」


ああ、ドジった…。
そりゃ俺が起き上がったらこうなるよな。

デコを押さえて痛みに悶えている彼女はそのまま上半身を起こした俺の胸へとポスっと項垂れてくる。
ふわりと香る洗剤のような良い匂いに少しドキッとしたが、そんな状況ではないことを思い出して頭を振った。


「はあ…痛かった。不意打ちやめてよ」
「あ、っと…悪い。わざとじゃねェんだ…」


顔を上げた彼女が大きく溜め息を吐いて俺を見上げてくるが、想像以上に顔が近くてハッと息が呑む。


「んー…ま、もういっか。お兄さん悪い人には見えないし、縄は解いてあげるよ。落ち着いて色々と話したいからリビング行こ」


俺が何か反応する前に彼女は縄を解き、そして俺の上から下りると大きな欠伸をひとつ。
…仮にも不法侵入したらしい男(俺)を目の前に、随分と肝が据わってるなこいつ。

俺に背を向けて部屋から出ていった彼女を眺めて、それから自分の身体をジッと観察してみた。

胸から腹にかけて全て包帯で巻かれているが、傷のあるだろう場所はジクジクと鈍い痛みを持つ。…治療したと言っていたのが本当だったとは、驚いた。


「ちょっとー?早くしてよ、コーヒー冷める」


ひょこりとドアから顔を覗かせた女に、それにしても変な奴だな…と思わず苦笑して彼女の元へと向かった。