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それから、宮殿の人達がそりゃもう沢山の料理を用意してくれていたみたいですぐに食事になった。
ルフィはバキュームみたいに何でもかんでも食べちゃうし、ウソップは踊り出すしチョッパー先輩もそれに便乗するし。ゾロはお酒ばっか欲しがってて、ロシナンテはそんなゾロと飲み比べ始めちゃうし。
とにかく食事の席とは思えないほどの賑やかさだったけど、みんな楽しそうでみんな笑顔だ。
「ほらナマエ!これも美味しいわよ」
「あー…ん。ほんとだ!美味しい。…けど、」
「んー?なによ?」
「早くもサンジの味に舌が慣れちゃったせいか、サンジの作る料理の方が美味しいなって思って」
船に乗ってた短い期間の中で最初に作ってもらったパスタの味が忘れられないでいる。
だってあんなに美味しいパスタは初めて食べた。
すごく美味しかったなぁ…とその味を思い出したら、自然と顔が綻んでしまう。
「ふふふ。あーら、サンジくん?顔真っ赤にしてどうしたのかしら?」
「え、ナミさん!?いや、これは…っ酒のせいじゃないかな!あははは…」
「ふーん、そうなの?サンジくんの近くにお酒、見当たらないけど」
「っ、ナミさん…勘弁してくれ…!」
お酒の入ったナミがサンジに絡み出したのを見届けて、潰れちゃう前にとロシナンテからお酒を取り上げる。
「ロシナンテ、その辺にしときなよ」
「ん、ああ…そうだな。呑まれる前にやめとくか」
ロシナンテも相当お酒が強いのか、あれだけ飲んでいても顔が少し赤くなってるだけでシラフとあまり変わらない様子でホッとした。
ロシナンテが酔ったらどんな風になるのかも気になるけど、これ以上騒がしくなったらさすがに宮殿の人達に申し訳ないよね。
「ナマエ、ココについてるぞ」
「え、なにが…んむ」
唇にロシナンテの指が添えられて、それからその指をペロッと舐めて口角を上げる。
その一連の仕草に、わたしの胸はドキリと大きな音を立てて身体の熱が一気に上がってしまった。
…これが惚れた弱味ということなのか。
ロシナンテといたら心臓がいくつあっても足りないや。
□ □ □
「わー!ナミ待って!ほんとに許して…!」
「何がそんなに嫌なのよ。お風呂入るだけじゃない」
「そうだけど、でも無理…!」
「もう!そんなにあたし達と入るのが嫌なわけ!?」
「…ッ違う。けど…」
「ナミさん、落ち着いて!無理に誘うものじゃないわ。ナマエさんにも何か理由があるのよ」
宮殿の中にある大浴場。
食事の後にみんなでここに来て、女子と男子で分かれて更衣室まで来たはいいものの。
背中に大きな火傷痕のある以上、ナミやビビと一緒ににお風呂になんて入れない。
気持ち悪いとか思われて嫌われたりでもしたら…って、考えるだけでも冷や汗ものだ。
ロシナンテは受け入れてくれたけど、優しいからってみんながみんなそうとは限らないはず。
既にタオル1枚だけの姿になっているナミとビビを目の前に、わたしは縮こまって小さく謝罪する。
「…いいわ。一緒に入るのは諦めてあげる。ただし、一緒に入りたくない理由は聞かせてもらうわよ」
「ナミさん……」
「出会ってそんなに長くないけどね、あたしナマエのこと好きなのよ。大切な仲間よ!」
ナミの言葉に、俯いていた顔がバッと上がる。
さっきまで怒っていたナミの表情が今は泣きそうな顔に変わっていて、わたしまで泣きそうだ。
「仲間のことは知りたいと思うわ。それに数少ない同性のクルーよ?もっと知ってもっと仲良くなりたいの!」
そう思うのっていけないこと?とナミは言った。
わたしのことが好き。大切な仲間。仲良くなりたい。
真っ直ぐに思いをぶつけてきてくれたナミに対して、ここでわたしが逃げるのはダメ…だよね。
「ー…わたし、」
無理しなくていいのよ、と優しく声をかけてくれるビビにお礼を言ってから着ている服をギュッと握った。
当たって砕けろ。砕けた時のことは、その時に考える。
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