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16




たくさんの血が流れ、多くの命が奪われた戦争は終結。

ルフィを連れてきてくれたビビのお父さんである国王とこの国の王女であるビビを広間へ見送った後、わたしとロシナンテ以外のみんなは気を失ってしまった。

みんな大怪我を負ってるしそれも当然のこと。
チョッパー先輩の医療品を拝借して、ロシナンテに手伝ってもらいながらみんなに応急処置を施していく。


「良かった、とは言い難いのかもしれないけど…戦いが終わってくれて良かった」
「ナマエ…」
「ロシナンテ、わたしも…みんなと同じくらいビビの為に一緒に戦えてたかな」


当たり前じゃねェか、とロシナンテがわたしの肩を優しく抱いてくれる。

生まれて初めて、自分が命を落とす危険と大切な人達が命を落としてしまう危険の両方と隣り合わせという状況下に置かれて。生まれて初めて、誰かの為にこんなに必死で戦った。ここまで自分の感情に突き動かされたのも、生まれて初めてのこと。

この世界において、そして海賊に身を置くにおいて。
前の世界にいた頃の平和ボケした自分の在り方を変える、一生忘れることのない出来事だと言える。


「そうだといいな…」


ホッとしたら急に眠くなってきちゃって、そのままロシナンテに身体を預けた。
降り続けている雨が当たるのが気持ちよくて目を閉じれば、ロシナンテに抱き込まれる。


「ナマエも頑張ったんだ。少し寝とけ」


その言葉に返事を出来たかどうか分からない。
わたしは誘われるまま、眠気に意識を奪われた。



□ □ □




目が覚めたら辺りは暗く、ベッドの上に寝ていた。
わたしを包み込む暖かい温もりはもちろんロシナンテのもので、頭上からはスースーと規則正しい寝息が聴こえてくる。

ここはきっと宮殿の一室。
ルフィを初めとした他のみんなは多分、別の部屋で寝ているだろうとすぐ隣の部屋から聞こえてくる大きなイビキに思わず苦笑した。


「…よいしょ、っと」


目が冴えてしまったわたしは離れていく温もりに名残惜しさを感じながらもロシナンテの腕から抜け出す。

外でサーッと振り続けている雨の音が耳に心地良い。
その音を聴いていたら何だかビビと話したくなってしまい、わたしは静かに部屋を出た。


「―…ナマエさん」
「あ、ビビ。まだ起きてたんだね」


部屋を出てすぐの廊下で窓の外を眺めていた水色がサラリと振り返ってくる。
身だしなみを整えた様子のビビはさすがは一国の王女なだけあり、その出で立ちからは気品が漂っていて少し緊張しちゃうな…。


「ナマエさん、本当にありがとう。貴女達のおかげでこの国を救うことができたわ…!」
「あ、いや…わたしは何もしてないんじゃないかな。すごいのはルフィ達で、」
「ううん、そんなことないわ。ナマエさんがいなかったらあの砲弾が爆発した時、ペルは死んでしまっていたかもしれない…それにクロコダイルから私を助けてくれたりもしたわ!本当に感謝してるの」


面と向かってそう言われてしまったら、なんか…すごく照れ臭くなってしまう。


「コラソンさんだってB・Wの1人を倒してくれたし、全然自分に関係のないこの国を救うために力を貸してくれたもの!それに、あの時も…」


それからビビは興奮したように早口でわたしやロシナンテを褒めちぎってくれるから、どんどん顔に熱が集中してきて湯気が出てきそうだった。
あー…もう、すごく嬉しい。本当に。だってビビの為に何か出来たのかなって不安で仕方なかったから。


「ねえ、ナマエさん」
「ん、んん?なに、ビビ」

「私、ナマエさんたちに何か恩返しができないかってとても考えたの。それで、1つ提案があるのだけど…」