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15




わたしがビビと一緒に砲撃を止める為にチョッパー先輩の背中に飛び乗ったのは、わたしも何かの役に立ちたいと思ったからだ。

あれだけクロコダイルをぶっ飛ばしたいと息巻いていたくせに、実際に本人を目の前にしてしまえば何も出来ず仕舞いで逆に伸されてしまった。
B・W幹部のオカマとの交戦の時だって、わたしがちゃんと能力を使えてなかったせいで結局はサンジに大怪我を負わせてしまうことになり。

『あたしは弱いから守ってもらうのが基本よ!』なんて言っていたナミでさえ、あんなに身体を傷だらけにして命を懸けて戦ったんだもの。
わたしだって、何か役に立たないと…!


「チョッパー!とにかく打ち上げる!方向を変えるから後はおまえが何とかしろ…!!」
「え、え!?おれが!?」


ゾロは刀の峰を使ってわたし達を上空へ飛ばした。
それと同時に上にいる砲撃手から放たれた2つの銃弾は、空中で身動きの取れないゾロに真っ直ぐ向かっていく。

あのままじゃゾロがモロに喰らってしまう…!
いくら普通の人より身体が丈夫だったにしても、銃弾を喰らってその上この高さから落ちたら死んじゃう。

わたしはチョッパー先輩の角を掴んでそれを支えにしてグルリと身体を反転させる。そしてゾロに向かっていく銃弾に向けて手を伸ばした。


「……っお願い!」


ピチャリと水音がすれば両手が水に変化して球体を作り出し、その球体は勢いよく飛び銃弾に追いつく。

ーーーボン、ボンッ!
水の球体がそれぞれの銃弾を包み込むと、水圧に耐えられずに水の中で小さな破裂音を立てて消えた。


「んナマエすわぁーん!素敵だァーー!」
「ゾロ…よかった!ナマエナイスよーっ!」
「…ッ、助かったぜ…!」


サンジが、ナミが、そして目が合ったゾロがニッと笑ってわたしを見ていた。

ロシナンテは地面に落ちていくサンジやゾロを凪の能力を使ってフワリと落下速度を軽減させてるみたいで、落下による怪我も心配なさそうで一安心。

とりあえず良かった…ゾロを助けられて。
ホッと息を吐くけど、わたし達の役目はまだ終わってはいないと気を引き締めて視線を上に持ち上げた。


「チョッパー先輩!わたしとビビを…!」
「っうん!分かった!いくよ、ふたりとも!」
「ええ!お願いトニー君…!」


身体を大きく変化させたチョッパー先輩が両手に乗るわたし達を思い切り砲撃手のいる方へと投げる。
その時チョッパー先輩に向かって銃が撃たれたけど、彼は今度は身体を小さくしてそれを避けたみたい。


孔雀一連・スラッシャー=v
「………っと!」


ビビの放った鋭利な輪刃がカエル女を切り裂き、わたしの手から飛んでいく水球が変な男の身体に穴を開ける。
…んー、わたしも何かカッコイイ技名とか考えて付けた方がいいのかな。無言っていうのも味気ないような。

そんなことを考えながら時計台の中に着地してジジ…と燃えていく導火線を水で消し、これで砲撃を止められた、とわたしもビビも思った。…だけど。

ーーーカチ、カチ、カチ。


「……ビビ、」
「…ッ嘘でしょう!?」


導火線を消しても尚、鳴り響く秒針の進むような音。

信じたくないけど、それはまさしく。
目の前にある大きな砲弾が、時限式のもので導火線など飾りで何をどう足掻いても爆発の一途を辿るモノだということを指し示していた。


「砲弾が時限式だった!このままだと爆発する…ッ!」


呆然とするビビを一瞥してから、わたしは時計台の下にいる皆にそう叫んで伝える。
驚きや絶望に目を見開いているみんな、それから後ろでガンガン!と床を殴るビビに歯を食いしばった。


「ここまで探させておいて、砲撃予告をしておいて…。一体どこまで人をバカにすれば気が済むのよ…どこまで人を嘲笑えば気が済むのよ!…クロコダイル!!」


ビビの悲痛の叫びに、ズキズキと胸が悲鳴を上げる。

さっきの、銃弾を水の中で水圧で破裂させたやつ。
あれのもっと大きなものを作り出して、この砲弾を包み込むことができれば…被害を抑えられるかもしれない。

わたしはギュッと握り拳を作ってビビに近付き、その肩に手を乗せる。
そして振り向いたビビは、わたしを見て…それからわたしの背後へと視線を向けていた。


「ナマエさん…、ペル…!」


わたしも振り返るとそこには1人の男の人がいて、彼はビビを優しく見つめてそれからわたしを同じような瞳で見つめてくる。


「ビビ様、私は…あなた方ネフェルタリ家に仕えられたことを心より誇らしく思います。そして、心優しいあなた方がビビ様の仲間でいてくれたことを感謝します」


ペルと呼ばれた彼はそう言い放ち、その身体を鳥に変化させると時限式砲弾を足で掴み上げて空を舞った。

そして、わたしは…咄嗟に、何も考えずに。
気が付けば、その彼の背中へとしがみつくように飛び乗っていたのだった。



守りたい気持ちは同じ
(何をしているんですかあなたは…ッ!)
(いいからこのまま空を上がって…!)