13
わたしとビビそしてカルー以外のみんながバラバラに別れ、門に走っていくと待ち伏せしていたらしいB・Wの幹部たちはその後を追いかけていく。
誰もいなくなったのを確認して、わたしとビビは頷き合い、隠れていた岩場から姿を現した。
「ビビ、大丈夫?」
「…っええ!ここで止められなければたくさんの血が流れることになる…何としてでも止めないと!」
グッと拳を握ったビビに手を添えて、徐々に遠くから聞こえてくるドドド…と地鳴りのようなそれにわたしにも少し緊張が走る。
もし、反乱軍がわたし達に気付かずにここを駆け抜けようとすればわたしやビビも無事では済まされないはず。
両手を胸の前で組み、溢れ出した水でわたし達3人の身体を包み込ませる。
何かにぶつかったりした時の衝撃を水が吸収してくれるはずだから、バリア的役割を果たしてくれると思う。
「―…きた!」
目視で確認できた反乱軍の数は数えきれないほど多い。
どうかビビの声が届きますように、と切に願った。
□ □ □
「止まりなさい!反乱軍!!この戦いは仕組まれているの…!私の話を聞いて!!」
ビビが大きく叫び、両手をバッと広げたその時。
迫り来る反乱軍とわたし達の間に、ボォン!!と大きな衝撃とそれと同時に舞う濃度の高い砂埃。
ハッとして後ろを振り返ると国王軍が構える大砲のひとつから一筋の煙が上がってるのが見えた。
「国王軍!!なんて馬鹿なことを…っ!」
「ビビ!前を見て…!」
砂埃のせいで何も見えない。
見えないけど反乱軍の雄叫びと馬が砂漠を駆けるけたたましい足音が耳を劈く。
「ー…ッ危な!」
急に目の前に現れた黒い馬を間一髪で避けてビビに目を向けたら、彼女はドカドカと馬に轢かれながらも必死に反乱を止めようと必死に叫び続けていた。
水のバリアを張っておいて本当に良かったと思う。
衝撃を抑えてくれてるお陰でわたし達に今のところ怪我はないけど、あれが無かったらと思うと肝が冷える。
「っ、反乱軍…止まれってば…!」
ー…そうだ。ここに大量の水でも降らせれば砂埃も消えて反乱軍も止めることができるかもしれない。
そう考えて急いで身体中から水を溢れ出させようとしたけど、まだ上手く能力を使えてないのか水の溜まりがすこぶる遅い。
何で…レインディナーズの時はすぐ溜まったのに!
「…!!ビビ、カルー…ッ!」
視線を向けた先に倒れているビビに覆い被さるカルーがいて、わたしは自分の身体に水を纏わせながらカルーの上に覆い被さった。
暫くして、砂埃も馬の駆ける音も聞こえなくなってわたしはゆっくりと2人から身体を離す。
「っナマエさん…!」
「…ビビ、そんなに怪我がなくて良かった。カルーも」
「ごめんなさい…!こうまでしても反乱は始まっちゃった…っ!」
涙を滲ませるビビを支えて立ち上がらせる。
無情にも、反乱は始まってしまった…だけどそれはまだ始まったばかり。
少しでも多くの命に血を流させない為にもまだ、わたし達にはできることがあるはずだから。
「行こう、ビビ」
「ええ…!諦めないわ!諦めの悪さなら船でちゃんと学んだもの…!!」
ビビの瞳はとても力強かった。
まだまだ元気なカルーにビビを乗っけて、わたしも後を追って走れるようにとズボンの裾を捲る。
その時、ビビ!と呼ぶウソップの声が聞こえた。
馬に乗ったウソップが馬の方が速いからとそれに乗るようにと促す。…だけど、何かが可笑しい。
「ウソップ、敵は倒してきたの?」
「ん?おお!倒したぞ!」
「どうやって?誰を?」
「ほら、あのオカマの…」
「…ウソップさん、証明して」
「おいおいビビ、俺を疑うのか!?ほら」
「ー…カルー!走って…!」
このウソップは、偽物だ。
わたしの言葉で、ビビを乗せたカルーは全速力で門へと走り出してくれた。カルーはとっても頭の良い子だ。
「チィ。なーんでバレたのかしらねーィ…」
「あんた、わたしの名前を1回も呼ばなかった。いや、知らないから呼べなかったんだね」
それに、この仲間の印は包帯を見せ合うんじゃなくて包帯をとってその下にあるバツ印までを見せ合うもの。
それをしなかったんだから、偽物に決まってる。
「ビビは追いかけさせないよ」
「あーら!あちしのオカマ拳法に敵うとでもぉ!?」
両手にグローブを嵌めて、構えをとる。
なんとなく、オカマなんかに負けるわけにはいかないとわたしの闘争心に火がついた。
いざ、尋常に
(相手は能力者…)
(水の能力、うまく使えるかもしれない)
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