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10




ナマエがクロコダイルに殴られて地に伏し、頭から血を流してるのを見て、俺は呼吸を忘れた。

あいつを守ると言った俺は今、何をしている?
海楼石の檻に閉じ込められて、手も足も出せなくなって、自分の女1人も守れず傷付く姿を見ているだけ。

クロコダイルに対してよりももっと強く、自分に対して腹の底から煮えくり返るような怒りが湧き上がる。


「あ、そんな…っやめて!!」
「っナマエ!!起きろ…!」
「くそ…ッ斬れねェ!!」
「やめろォ…!俺の仲間に手ェ出すな…!!」


横たわって動かないナマエに、サラサラと腕を砂に変えたクロコダイルがその手を翳す。

ーー…やめてくれ、頼む。
血が滲むほど手を握り、ナマエへと砂を伸ばしていくクロコダイルにカッと身体が熱くなった。


「…やめろォーーーッ!!」


叫んだ瞬間。
ナマエへ伸びていたクロコダイルの砂が消え、同じ檻の中にいたナミとウソップが腰を抜かした。


「能力が、効かねェ…だと!?それに、今のは…」


クロコダイルの見開かれた目と俺の視線が合う。
そしてゆっくりと上下に動いているナマエの胸を確認して、大きく大きく息を吐いた。


□ □ □



それからこの場所にビビが来たがクロコダイルに敵うわけもなく、俺達が閉じ込められている檻の鍵をバナナワニに食われ、水槽を突き破って出てきたバナナワニにビビは吹き飛ばされる。

隣の檻の入口に倒れたままのナマエを視界から外さねェようにしながら、その様子を見てるしかなかった。

そしてクロコダイルの電伝虫にかかってきた1本の電話は外にいるサンジからのもので、この場にいないサンジ達を呼びに行こうとビビは外へ繋がるドアへと向かう。


「この部屋に水が溢れるまてまだ時間がある!外に助けを呼びに行くわ…!」


瓦礫を登ってドアに向かおうとするビビに、クロコダイルが腕を砂に変えてフックだけを飛ばした。

ー…危ねェ!!
そう口を揃えて俺達が声を上げたその時、ガキン!という金属音と共に奴のフックが弾かれる。


「…ッナマエ、!」
「う、はあー…まだ頭痛いや…っ」


格子を杖替わりにしてフラフラと立ち上がったナマエが、水になった右手をクロコダイルに伸ばしていた。
…ナマエの顔に流れている血と、痛みに歪む彼女の表情を見てるだけで俺の精神的苦痛がヤバい。


「テメェ…やはり俺の邪魔になりやがる…」
「ボス。ここで時間を食っている暇はないわ。作戦の時間はとっくに過ぎているもの」
「…チッ。まあいい。そいつは当分使いモンにならねェだろうからな」


そう言ってドアに向かう途中、ビビを瓦礫の上から蹴落としてクロコダイルと部下の女はこの場所から消える。
そのあと、襲いかかってきたバナナワニから窮地を脱したビビは必ず戻ってくる!と、サンジを呼びに。


「ナマエ…大丈夫か?大丈夫じゃねェよな…ッ」
「はあ、はァ…心配かけてごめんね。大丈夫だよ」


俺のいる檻の近くまでやってきたナマエの頬に手を伸ばして、頭から頬に伝っている血を拭う。

大丈夫なわけねェのに、俺を安心させるためなのか無理に笑うナマエ。…能力に頼ってばかりいるからだ。だから、こんな海の石ころなんざに身を封じられて、大切な女も守れねェんじゃねーか。


「…ロシーのせいじゃないから。泣かないで」
「ぐっ…う、泣いてねェ!」

「…おいナマエ、イチャついてる場合じゃねェぞ」


ゾロの声と同時に、水槽から出てきたバナナワニがグルルと唸ってナマエの背後にデカい影を落としていた。



傷付いた愛しい人
(能力を使わなくても強くならねェと、ダメだ)
(こんなに大きなワニは初めて見た…)