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噂の彼女 [3/3]




午後の自由練習も終わり、大きなホールで夕食を食べた後は振り分けられた部屋で各々が好きな時間を過ごしていた。

1人部屋である沙蘭をこれから行われるトランプなり枕投げなりに誘おうとブン太と赤也が彼女の部屋を訪ねた、のだが。


「全然返事ないっすね… もう寝てたりして 」

「さすがにはえーだろい。俺が沙蘭の家に泊まった時は、あいつ22時までは起きてたし」

「ええ!?丸井先輩、沙蘭さんち泊まったことあるんすか!?」

「おう。俺がメリーさんに困ってるとき幸村くんが連れてってくれたのが沙蘭のとこだったんだよい」

「ず、ずっりー…!!俺も沙蘭さんち泊まりたいっす!」

「―…なんや騒がしいやっちゃなあ」


沙蘭の部屋の前でギャアギャア騒ぐブン太と赤也に出くわしたのは、氷帝の忍足侑士だ。

風呂上りなのか髪から雫が滴り普段より更に色気が増していて、ここに跡部の言う雌猫共がいたなら黄色い悲鳴が上がりまくるだろう。
忍足は愛用の丸眼鏡を上に着ていたTシャツで軽く拭き、カチャリと装着した。


「氷帝の忍足じゃん。なあ、沙蘭見なかったか?」

「沙蘭…ってああ、自分らのとこのマネージャーか。見てへんで」

「どこにいんだろうなあー」

「…なあ。黒峰さんって、」

「前の奴と一緒になんかしないでくださいよ。あんなんと比べモンになんねーっすから」


忍足がこれから聞こうとしてることが分かったのか、赤也は食い気味に答える。

赤也は沙蘭が跡部から色々と言われていることを知っている為、そんな彼と同じ学校である忍足を敵を見るような目つきで睨んでいた。


「まだ何も言うてへんやん?俺はまだ黒峰さんのこと何も知らんねんから」

「…まあ、跡部が警戒する理由も分かるぜ?前の奴のせいで一番被害あったの氷帝だもんな。だけど俺らだってバカじゃねーし、また同じような奴マネージャーにしたりしねえよ」


今度はブン太が苦笑気味にそう言って、噛んでいたガムをぷくりと膨らませる。


「沙蘭は、跡部が思ってるような奴じゃねーよい。それは間違いねえ。媚びてくるわけでもないし、仕事もちゃんとするし。俺たちの外見だけじゃなくて、”テニスをやってる俺たち”をきちんと見てくれてるしな」


だから俺は沙蘭のこと大好きなんだよ。
恥ずかしげもなくそう言い放ったブン太に『俺だって負けてないっすから!』と噛みつく赤也。

(ずいぶんと好かれとるんやな、黒峰さん。前の子はずいぶんと嫌われとったし、その時点で…)

忍足は顎に指を添えて考えるが、実際に彼女と接してみない限りははっきり信用できるとは言えないなと結論づけた。


「よし!沙蘭、探しにいくか。赤也」

「そうっすね!早くしねーと真田副部長に早く寝ろ!って怒られちまうし…」

「ほな、俺も一緒に探すわ」

「…え、忍足さんもっすか?」

「ええやん」

「まっ、いいんじゃねーの?」


バチンとブン太の風船ガムが割れる。
それからブン太と赤也、そして忍足は共に沙蘭探しを始めた。



□ □ □



その頃。

合宿所に棲みつく霊を減らそうと霊たちを祓っていた沙蘭は、再びそれを千歳に目撃され、そんな彼に担がれて四天宝寺メンバーの集まる部屋へと拉致られていたのだった。

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