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白か黒か [3/3]




合宿所内に入ると自分と同じ色のジャージを着た彼らが見えて、沙蘭はズンズンと早歩きで彼らの元へと向かった。

沙蘭に気付いた幸村がふわりと彼女に微笑みかける。
しかし沙蘭はそんな幸村の両脇を掴んで、彼の身体をクルリと反転させた。


「…沙蘭?」

「ちょっと、落ち着かせて」


幸村の背中にボスッと頭をつけて、力無く呟いた沙蘭。
そんな沙蘭を不思議に思った幸村だが、続いて聞こえてきた"跡部むかつく"という小さな呟きが聞こえて状況を理解したようだ。

(跡部の奴…これ以上沙蘭を追いこんだら本気で許さないよ)

そう思っていると、偶然にも跡部と目が合った幸村は無表情で彼を見た。


「沙蘭ちゃん、ほーれ。俺の背中も貸してやるぜよ」

「雅治、汗すごいけど…」

「げっ。今すぐ着替えてくるなり…!」


ピューッと駆け足で去っていく仁王と、俺も!とその後をブン太と赤也が追いかける。
ブン太と赤也も仁王と同じように沙蘭に背中を、と思ったらしいが自分たちも汗をかいていることに気付いて着替えに行ったのだろう。

ちなみに沙蘭と仁王がお互いに名前呼びになったのは、合宿の3日前くらいからだ。

(癒されるわね…。なんだか不思議な気持ち)

着替えにいった3人を微笑ましく見送った沙蘭の頭は未だに幸村の背中にくっついたままでいる。
そんな沙蘭の頭にポン、と手を乗せたのは柳だった。


「跡部に何か言われたのだろうが、気にするな。黒峰がしっかりとマネージャーの仕事をこなしていることを俺たちは分かっている」

「今日のドリンクもとても美味しかったですよ。いつも通り、私が好きな味でした」


柳と柳生の言葉に、沙蘭はぽかぽかと胸が温まるのが分かる。


「ブン太と赤也は特に喜んでたぞ。これで午後も頑張れるってな。まあ、俺もだけどよ」

「うむ。黒峰は我々テニス部に必要不可欠な存在だ。これからもよろしく頼む」


そして、ジャッカルと真田の言葉も。
沙蘭は今までに感じたことのない感情が胸いっぱいに広がって、何か返事をしようにもうまく言葉が出てこないようだった。


「いつまでもむくれてないで、笑ったら?それで俺たちも頑張れるから」


どこまでも優しい声音で言った幸村は、振り返って沙蘭の両頬を人差し指で押しつぶす。
押して離してを繰り返す幸村の手を止めて、沙蘭はそのまま彼の手を自分の頬へと寄せた。


「―…好き」


それが、沙蘭の素直な気持ちだった。
その言葉は幸村だけに向けられたものではなく、立海のメンバー全員に向けた言葉だと彼は分かっている。

分かっているが、そんな柔らかにそして綺麗に微笑んでそんなことを言われてしまったら。


「………っ」


さすがの幸村も赤面せずにはいられなかったようだ。
幸村は肩に羽織っていたジャージをとって、自分の顔に押し付けた後、勢いよくしゃがみ込む。

(聞いてたのが俺だけでよかった…)

心底、そう思った。


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