テニプリ連載 | ナノ
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雨の日のこと




入学してから2ヶ月ほど経ち、学校生活にも慣れてきた梅雨の時期。

蓮二くんは話していた通りテニス部に入部したらしく、隣の席の仁王くんも偶然にも彼と同じテニス部に入部したらしい。
後で知ったけど、立海のテニス部って全国レベルでとても強いみたいだった。

まだ1年生だからきっとまだ試合とかそういうのには出たりしないんだとは思うけど、彼らのテニスを見れる機会が今後あるのならこっそり見に行ってみたいなんて思ったり。


「(う、うる、…あった)」


図書委員会に入ったわたしは、放課後の今、貸出中の本と返却された本の整理をしていた。
部活に入っていないからこうして何もやることのない放課後にこういった仕事をもらえるのは内心、とてもありがたい。

それにしてもこの学校の本のラインナップはすごい。
年齢層が90%以上、40〜60代に読まれる傾向にあるという麗氏(うるわし)トウの本まで置いてあるなんて…渋いなあ。

それにこれ返却されてきた本だし、これを読む人が生徒にいることにもビックリだ。
本好きなわたしでも手を出そうとは思わないほど内容が重く、濃い作品なだけにこれを借りた人が気になるところ。


「 (ん、あれ…?)」


その本を本棚に仕舞おうとしたところで、ページの間にしおりが挟まっているのに気付いた。

ペラペラの紙で出来たものではなく、金属でできた細いフォルムの高そうなしおり。
小さいのにずっしりと手に感じる重みに、その高級さが素人目でも分かる。

返してあげないときっと困る、よね。誰かからの贈り物で大切なものかもしれないし。


「(えーっと、これを借りた人は…)」


手に持つ貸出管理票をペラリと捲り、確認していく。

一番最近の日付で3日前…きっとこの人だ。
1年C組、柳生比呂士くん。
C組ってことは隣の隣のクラス。うーん、呼び出すのにけっこう勇気が要りそう…。

とりあえず、と傷付けてしまったら嫌だしポケットからハンカチを取り出してそのしおりを丁寧にそれに包んでカウンターに置いておいた。

委員の仕事終わったらまた考えよう。





ザーッと降る雨音をBGMが心地良い。
窓の外を見れば綺麗な赤い夕焼けが見えて、その光にキラキラ輝く雨の滴が綺麗だった。

気付けば長いこと本整理をしてしまっていたようだ。


「(今日のお夕飯、何にしよう)」


18時を過ぎると近くのスーパーの特売がほぼなくなってしまうし、今日はここまでにして続きはまた明日やろう。

両手に抱えた本をしまって、カウンターの上に置いておいたしおりをハンカチに包んだままそっと鞄へ入れた。