テニプリ連載 | ナノ
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近付く距離




立海の男子テニス部は本当に全国レベルの強さらしかった。
県大会ではどの学校との試合も圧勝で、レギュラー全員の試合まで回らなかったという。

実際に県大会へ出場した蓮二くん情報だからそれは本当だと思うんだけど…すごいなあ。

そして1年生でレギュラー入りした蓮二くん、精市くん、真田くんの3人。
彼らに試合が回らない時もあったけど試合が行われたものに関しては全て勝っていたっていうし。


「幸村くーん!頑張ってー!」
「きゃー!丸井くんかわいい!」
「仁王くんー!」
「柳くんも素敵ー…!」


そしてこのように。
県大会で優勝を果たし、次の関東大会に向けて練習に励む男子テニス部の人気は今までよりも格段に上がっていて最早なにかのアイドルグループかのような存在になっている。

最近ようやくテニスについての知識もある程度ついてきたし彼らのテニスを見に行けるかなと楽しみにしていたのに、この状態ではテニスコートに近付くことすらままならない。

図書室の窓から豆粒ほどにしか見えないテニスコートをチラリと見て、人知れず溜め息をついてしまった。


「(残念だけど、学校で精市くん達の練習を見に行くのは無理そう…)」


少なくとも、学校の女の子たちのテニス部熱が冷めるまでは。

テニスコートから目を離すと、ごみ袋を持ったツカサちゃんがわたしに気付いてブンブンと勢いよく手を振ってくれているのが目に入った。


「(あ、先生に注意されてる)」


ふふ、と思わず笑ってしまっていたらまたツカサちゃんがこちらを向いたので小さく手を振り返す。
わたしも早く委員会の仕事を終わらせてツカサちゃんと一緒に帰れるように頑張ろうっと。

それから本棚の整理を終え、返却されてきた本を両手いっぱいに抱えてカウンターから立ち上がると、同じ図書委員である女の先輩3人ほどと同じ学年の女の子の1人が目の前に立ちはだかってきた。


「………っ?」
「ごめん、夕雲さん!申し訳ないんだけど、あと全部頼んでいい!?」
「あたしたちテニス部見に行きたいの!」
「まあ、先輩の頼みだし聞いてくれるよね?」
「夕雲さんテニス部に興味なさそうだしいいよね?」


ほぼ拒否権などないというような感じで詰め寄られて、何かを考えるまでもなく小さく頷いてしまう。

いや、うん…これで断れる勇気はチキンなわたしにはない。残念ながら。というか石川さんは同じ学年なのに、って断れないわたしも悪いし心の中で愚痴っても仕方ないんだけどね…。

わたしが頷いたのを確認した瞬間に4人はすごい速さで図書室を出ていく。


「(あと全部って…)」


カウンターの上に置かれた大量の本を一瞥して、わたしは深く溜め息を吐いた。








「…っとに、茜もお人好しだよなー」


ドンッと大量の本の山を椅子の上に置いてそう呟くのはツカサちゃん。

委員会の仕事を終えてわたしの様子を見に来てくれた彼女にさっきあったことを説明すると、グッと眉間に深い皺を寄せて顔を歪めていた。

それから『あたしも手伝う』と言ってくれたツカサちゃんの好意に甘えてしまい。
でもそのおかげで1人ならもっと時間がかかったであろう仕事がもうすぐで終わりそうだ。


「(ツカサちゃんごめん。図書委員会じゃないのに手伝わせちゃって)」
「べっつに!だって茜は何も悪くねーし。ってか、ごめんよりありがとうの方が嬉しいンだけど?」
「(ありがとうツカサちゃん。今日暑いし、帰りにアイス奢らせて?)」
「お、まじで?やった!あたしチョコミントな!」


嬉しそうにニッと笑うツカサちゃんに、わたしも微笑み返す。
そしてそれから約15分後くらいに、ようやく全ての本の片付けを終わらせることができた。