テニプリ連載 | ナノ
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テニス日和




青をベースに差し色で蛍光イエローの入ったテニスラケットを専用のバッグに入れて背負い、最近いっそう強くなってきた紫外線から守るためにキャップを被った。
”テニス初心者の手引き”という本が入っている小さめのショルダーバッグを肩から下げて、よし!と気合を入れる。

日曜日の今日、わたしはテニスをしに行く準備をしていた。



そう思い立ったのも、わたしの友達にはテニス部が多いから…というかツカサちゃん以外みんなテニス部という偶然が理由で。

彼らはよくテニスの練習や試合を見に来てほしいと誘ってくれているのだけれど、テニスに関してほとんど無知なわたしが軽々しく見に行くのはなんだか失礼なような気がしてしまって未だに一度も見に行けてなかった。

それに、放課後はテニス部の練習をフェンス越しに見に来ているたくさんの女の子達もいてそれに近付く度胸もそこに混じる勇気もなくて尻込みしちゃってたというのもある。


<もう家出たのかい?>


バス停でバスがくるのを待っていたらブルッと携帯が震えて、見れば叔父さんからのRINE。


<家は出ました!今はバスを待ってます>
<了解。危ないことしないように、気を付けて出かけるんだよ>
<はい!あの、テニスラケット譲ってもらってありがとうございました!大切にします>


その返事を送ってから数分経っても既読がつかなくなったので、叔父さんも仕事で忙しくなったのだろうと携帯をバッグへ仕舞った。

わたしが今背中にしょっているテニスラケットは叔父さんが昔使っていたものらしい。
いつの日か言っていた古いお友達の影響で叔父さん自身もテニスを少し齧ったと言っていたけれど、譲り受けたテニスラケットは目立った傷はあまりなく新品に近い状態だったからそこが少し疑問だけれど。

叔父さんとのRINEを終えて約5分後、バスが到着し、ゆらゆらと揺られてテニスコートや壁打ちなどができる大きな公園へと向かった。




■■■



昨日雨が降ったせいか地面には所々に水溜りができていて、そのせいもあってか人はあまりいない。
下手くそな動きを見られても恥ずかしいだけだったし、ちょっと良かったかも。

小さな丸い水滴の乗るベンチにバッグを置いて、まずはストレッチから始めた。





パコーン、とテニスボールが目の前の壁に当たって跳ね返ってきたのを確認してそれを打ち返す手を止める。

腕時計を見れば、この場所に来てから軽く1時間が経過していてその間ずっと休憩なしでやってたのかと自覚するとちょっとゾッとした。

今まで集中し過ぎてて気づかなかったけれど、日差しが強くてすごく暑い。
ふと太陽を見上げれば眩しすぎる太陽の光に目を刺激されてクラリと軽い眩暈を起こしてしまう。

集中すると時間忘れちゃうの癖だなあ。気を付けないと。


「はあー…っ」

「おつかれっす!おねーさんなかなか良い動きしてんじゃん!」
「………!?」


荷物の置いてあるベンチに戻ると、そこに座っていたらしい男の子がニッと笑ってわたしを見上げている。

び、びっくりした…!全然見えてなかった!

クルクルの黒い癖毛と真ん丸の瞳が印象的な男の子はビックリしたまま固まるわたしを見てケタケタと笑い、ピョンッとベンチから立ち上がった。
見た感じ小学生っぽいけど…本当にいつからここにいたんだろう。


「よっしゃ。おねーさんにお手本見せてやるぜ!休みがてら見てて!」


背中のバッグからテニスラケットを取り出して器用に回して遊ぶ彼は得意げに笑う。

コクリと頷いて大人しくベンチに腰掛けて、お言葉に甘えて彼の壁打ちの様子を見学させてもらうことにした。