テニプリ連載 | ナノ
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糖分不足の彼




「(……なるほど)」


隣のクラスだったツカサちゃんにお昼を誘われて、屋上の日陰でお弁当を食べていた。

ツカサちゃんがあんなにテニス部に対して警戒していたのは、お兄さんが以前ファンだという女の子からストーカーを受けていたことがあって命の危険までさらされたことが理由らしい。


「うちらの学年のテニス部にも負けてないくらい、兄貴もかっこいいからさー。茜が誰を目的でテニス部を見てたか分かんなかったからよ…ごめんな」
「(それはもう前に謝ってもらったからもう大丈夫。それよりも、お兄さんとても大変だったんだね…)」
「まあな。それから兄貴、軽く女性恐怖症になっちまってさ。あたしは兄貴のために、なるべく女らしさを出さねーようにしてンだよね」


髪も本当はここまであったんだぜ、と自分の背中のお尻あたりを指さすツカサちゃんに不甲斐なくもかける言葉が見つからなくて苦笑しかできなかった。

かっこいいという理由でストーカーされて命まで狙われるって、もしかしたら彼らもそういう危険に晒されてしまう可能性もなくはない…。

だってツカサちゃん情報によれば、すでに1年生の男子テニス部ファンクラブが立ち上がってるらしいし。


「兄貴はさ、基本的に誰にでも優しかったんだよ。だから勘違い女とか出てきて、ああいうことになったってのもある。だからまあ、茜のテニス部の友達とやらがどいつか知らねーけど…嫌なら嫌って言ってやれば大丈夫だろうよ」


蓮二くんは優しいけど、ちゃんと嫌なものは嫌ってハッキリ言えそう。
仁王くんはよく分からないけれど、女の子に囲まれても嫌そうな顔してるから大丈夫かな。

幸村くんはいつもニコニコしてて誰にでも優しそうだけど、なんだろう…幸村くんはあまり心配いらないような気がする。…たまにその笑顔が怖く感じる時もあるし。


「テニス部の心配もいいけど、自分の心配もしろよ茜」
「(ん。なんで?)」
「なんでっておまえ…そんな容姿してたらほっとかねーだろ周りが」
「(そんな容姿ってどんな容姿…。というかほら、わたしまともに話せないしこんな面倒なのを好きになるとかないよきっと」
「はあ…バカか」
「………!」


ツカサちゃんのお弁当のデザートであろうイチゴを口に突っ込まれて、大人しく口をもぐもぐさせているとツカサちゃんはグッと眉間にシワを寄せていた。


「声が出ようが出なかろうが、茜は茜だろうが。おまえっていう人間がこーんなにかわいくて素直で天然タラシだから、あたしは気に入ったんだよ。声が出る出ないは関係ない」


本当に面倒だと思ってんなら関わろうとなんかしねーよ、そもそも。

続けられたツカサちゃんの言葉に、目の奥が熱くなって、視界がどんどんぼやけていく。

嬉しかった。本当に。
だって出逢って間もないのにそんなこと言ってくれるなんて思ってもみなかったから。


「きっと同じこと思ってるぜ、茜の友達のテニス部連中も。そうじゃねーと、昼に誘ってきたりしねーだろ?まっ、今日はあたしが茜を勝ち取ったけどな!」


フフン、と得意げに鼻を鳴らすツカサちゃんに涙が止まり、ふふっと笑ってしまった。

今日は蓮二くんと幸村くんからそれぞれお昼のお誘いのメッセージがあり、4時間目の授業中に隣の席の仁王くんからもメモで『昼、一緒にどうじゃ?』と誘われたのを思い出す。

とても嬉しいお誘いではあったけれど、昨日のうちにツカサちゃんから誘われていたから申し訳ないけれど3人はお断りすることになってしまった。

わたしはみんなで一緒に食べればいいんじゃないかなって思ったんだけど、ツカサちゃんに断固拒否されちゃったんだよね。


「(ありがとう、ツカサちゃん。ツカサちゃんも、わたしにとっても大好きなお友達だよ)」
「……っか、かわいすぎかおまえー!!」
「……ッ!?」


わたしよりだいぶ身長の高いツカサちゃんにいきなりガバリと抱き締められて、ビックリする。

そんな楽しくて有意義なお昼休みはいつもより時間が過ぎるのがとても早く感じて、気付けばもう午後の授業が始まる時間になっていた。