テニプリ連載 | ナノ
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甘味と丸眼鏡




梅雨の明けた、蒸し暑い初夏。
今日は休日でわたしは早起きをして出掛ける準備をしていた。

ーーーピンポーン。

最後の仕上げに髪をアイロンで緩く巻いていると、チャイムの音が聴こえて急いで玄関まで走る。


「やあ、おはよう。茜ちゃん」
「(おはようございます。叔父さん)」


叔父さん相手にはあまりメモを使う必要がなくて、彼はわたしの口の動きだけで言葉を読み取ってくれる。
読唇術とか言ってたかな。すごいよね。

きっちりと玄関に鍵をかけて外に出ると、いつ見てもカッコイイ黒光りした高級車が停まっていた。


「本当に駅までで大丈夫かい?今日は午前はそんなに急ぎはないから、東京まで送っていってあげられるが…」
「(大丈夫です!そこまで迷惑はかけられないですし…電車に乗るのも久々なのでちょっと楽しみでもありますから)」


立海の副理事長である彼をこんな、言い方は悪いけどタクシーみたいに使ってるだけでもとても申し訳なくて今すぐ車を降りたい気持ちもあるけれど。

『茜ちゃんに何かあったら秋人に顔向けできない』とわたしの身を心配してくれる叔父さんの好意を無下には出来なかった。




叔父さんの車に乗せてもらってしばらく、小さく開いた窓から吹く風を気持ちよく顔に受けていると手に持っていた携帯が震える。


〈暑くて死にそうじゃ…。アイス食べたい〉


そんなメッセージとヒヨコが泣いているスタンプを送ってきたのは仁王くん。

確かに今日はなかなかに暑い。
それでもテニス部の活動は休日の今日も行われているのだろう。

仁王くんってけっこう肌白くて体調崩しやすい気がするから、気をつけてほしいな。


〈水分こまめに摂って適度に休みながら頑張ってね。熱中症には気を付けて〉
〈なあなあ。おまえさんは今日…〉


仁王くんからの返事はそこで途切れて送られてきていて、どうしたんだろう?と疑問に思っていると今度は違う誰かからRINEが届いた。


〈仁王が練習をサボって茜に連絡をしてるのを発見した。きちんと練習に参加するように茜からも言ってやってくれ〉
〈癒しがほしいって仁王がうるさい。まあでもそれには俺も賛成。ってことで夕雲さん、暇な時にでもテニス部の練習見に来てよ〉


蓮二くんと幸村くんからだ。

仁王くん、練習をサボるのはダメじゃん…。
それに、癒しがほしいのとわたしがテニス部の練習を見に行くのと何が関係するんだろう?


「茜ちゃん、なんだか楽しそうだね」
「(あ、はい!友達から連絡が来てて…3人ともテニス部なんですよ)」
「テニスかあ。そういえば私の古い友人がとても有名なテニスプレイヤーだったんだよ」
「(へえ!そうなんですね。聞いたらみんな知ってるかなあ…)」
「名前は、っと。駅に着いたね」


ありがとうございます、と叔父さんに勢いよく頭を下げて車から降りる。

叔父さんは『何かあったらすぐ連絡するんだよ』と念を押してから、車を走らせてお仕事に向かった。
それを見送って、わたしは携帯に目を移す。


〈今度、時間ができたら差し入れ持って見に行ってみるね〉


これと同じ文章を蓮二くんと幸村くんに返信して、鞄に携帯をしまった。

そもそも今日わたしがなんで東京まで行きたいのか。それはわたしの甘いもの好きが大いに関係していた。


「(ふぅー…よし!)」


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