テニプリ連載 | ナノ
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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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楽しい放課後




お店に入って数十分。
ケーキバイキングのお店で好きなものを好きなだけ食べられるということもあり、特にわたしと丸井くんのお皿には常にケーキが乗っかってる状態だった。


「でもすげーよなあ。幸村くんも柳も。1年でレギュラーになったの今まで初めてらしいぜ?」
「あと真田もじゃな。おまんらの強さは異常ぜよ」
「俺のデータ違いでなければ、それはお前たちもだろう。言ってしまえば、お情けで選ばれた2年レギュラーよりは確実に実力は上だ」
「言うね蓮二。まあ、事実だけど。あ、茜!クリームついてるよ」


ふふ、と微笑んだ精市くんが親指の腹でわたしの口元を拭ってくれる。

もう小さな子供じゃないのに、口にクリームつけてるなんて恥ずかしい…!
このお店のケーキが美味しすぎて次々食べちゃってたけど、もう少し食べ方に注意しないとまた恥ずかしいことになりそうだ。

丸井くんはずっと同じペースでケーキを食べてるのすごいな。


「夕雲は?テニスとか興味あるんか?」


不意に仁王くんに話を振られて、んーと考えてみる。

小学校の時にちょっとだけやったことがあるくらいで、今やったらきっとラケットにボールを当てることすらできないかもしれない。
でも、テニスをすごく楽しんでる彼らの話を聞いて興味がわいてきたのもあるし今度のお休みにすっごい久しぶりだけど打ちに行ってみようなんて思ってみたり。


「(前にほんとに少しの期間だけやったことがあるくらいかな)」
「ほう」


ノートに向かってペンを走らせる蓮二くんに苦笑する。


「前にも言ったけど、今度練習見に来てよ。近いうちに関東大会もあるから、その試合も見に来てくれたら嬉しい」


精市くんが誘ってくれて、わたしはコクリと頷いた。
みんながどんなテニスをするのか見てみたかったから。


「こりゃ練習張り切らんといかんのう」
「仁王はサボり癖あるからなあ。んでいつも真田に怒られてやんの」
「(真田って、真田弦一郎くんのこと?)」
「そそ!なんだおまえ真田とも知り合いだったのかよぃ」
「(校章バッジを貸してもらったことがあるんだ。あのとき丸井くんにあげたシフォンケーキも、本当は真田くんへのお礼に作ってきたものだったんだよ?)」
「へー。でもあんなうまいもん、真田には勿体ねえよ!」


ドヤ顔で何回も頷く丸井くん。

というかわたしが今ビックリしてるのは、まさか真田くんまでテニス部だったってこと。
確かにさっきレギュラーに選ばれたって話してるときも彼の名前が出てたのには気付いてたけど…んんー、なんだかちょっと意外。


「ね、茜。今度俺にも何か作って来てほしいな」
「(もちろんいいよ!何がいいかな?)」
「はーい、俺は茜ちゃんお手製の弁当が食べたいなりー」
「ちょっと仁王は黙っててよ。俺がお願いしてるんだから」
「はいはい、俺また夕雲のケーキ食いたい!あ…ってか、みんな名前で呼んでるし俺も名前で呼ぶから、シクヨロ茜!」
「あーもう丸井もうるさい!」
「落ち着け精市。茜、俺は和菓子を希望する」
「れーんーじ?」


ジロリと睨まれた蓮二くんはどこ吹く風で知らんぷり。
すっかり拗ねてしまった精市くんは、ムッと頬をわずかに膨らませながらわたしを見る。


「…俺は茜の作ったのならなんでもいい」
「………っ」


精市くんのそんな様子がなんだか可愛くて。
わたしは不覚にもキュンとしてしまった胸に手を当てて、ニッコリ笑いながら何回か頷いて返事をしたら彼は嬉しそうにふわりと笑った。






それから楽しい時間はあっという間に過ぎてしまい、暗くなる前に解散してわたしは帰宅した。

仁王くんはお弁当、丸井くんはケーキ、蓮二くんは和菓子で精市くんは何でもいい。
あの会話の中でとったメモを見つめながら布団に寝転がる。

今日は材料買えなかったから近いうちに買い物にいかなきゃかなー。


「(…なんだか、楽しいな)」


友達もたくさんできて、毎日充実して、こんなに幸せでいいのだろうかと少し不安になるけれど。
こんなわたしと仲良くしてくれる彼らとツカサちゃんの存在は、これからずっと大切にしていきたい。