そんなこんなで駅近くのお店周辺まで歩いてきたところで、キョロキョロと仁王くんを探すとすぐに彼は見つかった。
見えたのは仁王くんの銀髪と、燃えるような赤髪。
「…げっ」
わたしを見つけた仁王くんは口角と共に右手を上げたけど、次の瞬間にはその表情が変わった。
「げ、って酷いな仁王。俺たちが一緒だと何かマズイのかい?」
「はあー…夕雲。お前さん、幸村と知り合いなのは知っとったが柳ともだったんか」
ニッコリ笑顔の精市くんに、げっそりしたうような仁王くん。
仁王くんも精市くんも蓮二くんもテニス部。
ということはあの赤い髪の彼はあの時の…。
「お!夕雲じゃん!なになに、仁王の友達ってお前のこと?」
「おや、丸井もいるの?」
あ、やっぱり糖分の彼。丸井くんだ。
「うわ、幸村くんじゃん」
「お前たちさっきから俺に対して失礼じゃない?」
腕を組んで不機嫌そうに顔を歪めた精市くんを落ち着かせる蓮二くん。
蓮二くんは相変わらず、手に持っているノートに素早く何かを書き込んでいた。
「なあ、夕雲。ブンちゃんとも知り合い?」
「(うん。この間、糖分不足で死にそうになってたから作ってきたケーキあげたんだよ)」
「そうそう!こいつのケーキちょー美味くてさ!」
「抜け駆けしよってこのブタちゃんが」
「本当だよ。俺だってまだ茜の手作りなんて食べたことないのに。このブタ」
「ちょ、ひどくねえ…!?」
ギャアギャアと言い合う彼らは、なんやかんや仲が良いからあそこまで言い合えてるんだろうなあと少しだけ羨ましく思う。
ブタって言われたいわけじゃないんだけどね。
クスクス笑ってその様子を見ていたら、開眼した蓮二くんと目が合った。
「茜、今からケーキを食べに行くようだが体重増加には気を付けろ。俺のデータによればおまえの今の体重は…」
「……ッ!?」
危うく体重をバラされそうになって慌てて蓮二くんの口を手で覆う。
い、いきなり何を言い出すんだ蓮二くんは!というかそもそもなんでわたしの体重知ってるの!
家のことといい今のことといい、蓮二くんのデータ…侮れなさすぎる。
「ふ、冗談だ」
「(冗談って…でも知ってはいるんでしょう?わたしの体重)」
「ああ。だが気にするような体重でもないだろう。むしろもっと肉を付けた方がいい」
「(あ、ちょ…!)」
お腹あたりをくすぐるようにつつかれて、くすぐったくて身を捩っているとさっきまで言い争っていた3人がズイッとこっちに寄ってきた。
「なに2人でじゃれてんのさ。蓮二ずるいよ」
「何もずるくなどないだろう。正攻法だ」
「いやお前ら何の話してんだよぃ。てか早くケーキ食いに行こうぜー!な、夕雲」
「(うん!ケーキ楽しみ)」
「はあーあ。俺と夕雲だけのはずだったんにのう…」
仁王くんが大きな溜め息を吐いてるのに気付いて顔を覗き込んだら、バッと顔を逸らされてから軽くデコピンされた。…え、なんで。
「ふむ。仁王が照れるなど、新しいデータだ」
「あ、こら!データとるのやめんしゃい!」
≪ ≫