そんな勘違いされるだなんて心外だし、あまり怒ったりすることしないわたしだけどこれはちょっと…ムカつく。
「(わたしは、屋上庭園の花たちを見る為にここに来たんです。テニス部を見ていたのはわたしのお友達が何人かテニス部に所属していて、前々からどんなテニスをするんだろうって気になってたからで…!)」
勢いよく書きなぐったそれを押し付けるようにして彼女に渡し、わたしは腕を組んでフン!とそっぽを向いた。
確かに蓮二くん達はかっこいいと思うけれど、別にかっこいいからお友達になったわけでもなんでもない。
そんな、わたしがあたかもイケメン好きでイケメンだから興味持ってるとか思われるのは本当にいや。
「へえ、じゃあ携帯見せてくんね?」
「(携帯?何でですか)」
「さっきなんかパシャパシャ撮ってたから、テニス部の連中を盗撮してたんじゃないかと思って」
「〜…っ!(本当に失礼な人ですね!いいですよ、好きなだけ見てください)」
ロック解除してフォルダを開き、その画面のまま彼女に渡す。
そもそもなんでこんな今日初めて会った人に、テニス部を見ていただけでここまで追及されなきゃならないんだろう。
もしかしてこの人、テニス部の誰かのファンとか恋人とかでわたしがテニス部見てたのが気に入らなかったとかそういうことだったり。
「…っあー、ごめんなぁ。あたしの勘違いだったみたい」
ふう、と髪をかきあげてもう飴のついていない棒を口に咥えながらそう言った彼女。
…あの白い棒がタバコに見えてしまうのは何故だろう。
まあ何にせよ誤解は解けたみたいだし、とりあえずは良かった…のかな。
「(別に大丈夫です)」
「それにしても珍しいよなあ、あのイケメン揃いのテニス部に興味ないなんてよ」
「(テニス部に興味があるとかないとかではなくて、わたしは)…っ?」
「敬語、やめてくんね?一応、同い年」
コクリ、と小さく頷いて顔色を窺うようにして彼女を見てると目を丸くさせてそれからブハ!と吹き出した。
「あー、かわいいかわいい。おまえ、かわいいね。よしよし」
クツクツ笑いを零しながら、くしゃくしゃとわたしの頭を撫で始める彼女に戸惑う。
なんだろう…なんだかよく分からないけど、変な人だ。
「あたし、小宮ツカサ。おまえのこと気に入ったし、トモダチになろーぜ」
「………、!」
念願だった、女の子のお友達。
確かに彼女は第一印象こそ最悪だったけれど、わたしはまだ小宮さんのことをあまりよく知らないし、第一印象だけで判断したらいけないよね。
「なあ、だめ?さっきいじめたから?ごめんって。なあ、ロリポップあげるから許してくれよー」
「……(むむ、)」
それに、わたしを思い切り抱き締めて心なしか少し高くなった声でおねだりをしてくる小宮さんがちょっと可愛く思えてきて。
「(わたし、1年A組の夕雲茜。これからよろしくね、小宮さん)」
「…まじかサンキュー茜!あたしのこともツカサって呼べよ!」
初めての同姓の友達は、ちょっと口が悪くて不良みたいで、でも笑顔が素敵な女の子でした。
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