途中すれ違った先生に『気を付けて帰れよー』と声をかけられながら昇降口に辿り着く。
靴箱に手を掛けて開けると、中からいきなりピョンッと何かが飛び出してきた。
「………ッ!?」
ビックリしすぎて、まるで漫画のように飛び跳ねてしまい床に尻もちをつく。
ちょ、待って…本当にびっくりして心臓止まりかけた…っ!
胸に手を当ててバクバクと激しく脈打る心音を落ちつけようとするけど、しばらくは収まりそうにない。
一体何が飛び出して…。
『ビックリした拍子にうっかり声出るようにならんかのう』、そんなメモが落ちているのを発見し、その傍らには飛び出してきたであろう手の平サイズの小さなびっくり箱が。
「(に、仁王くん〜…っ!)」
蓮二くんにもそうだけど、仁王くんにもわたしが声が出ない理由が病気ではないということを話したことはある。
それから何度か彼から『おまえさんの声聴いてみたいし協力する』というようなことを言われてはいたけど、こんな協力だなんて。
嬉しいけど…これは違うような気がするよ仁王くん。
「君…大丈夫かい?」
「……っ、?」
本日二度目のビックリ。
いつからそこにいたのか、尻餅をついたわたしを心配そうに覗き込んできたとても綺麗な男の子。
せっかく落ち着いてきたのにまた心臓が…!
わたしはバッと勢いよく立ち上がって、素早くペコペコと何度か頭を下げた。
「転んだのかい?怪我はない?」
「(大丈夫です!ちょっと友達の悪戯に引っ掛かってしまって…)」
メモ帳に書いて見せると、目の前の彼は『君があの…』と呟いてそれから柔らかく微笑んだ。
「意地悪な友達だね。それで君はこんな時間まで何故学校に?」
「(図書委員の仕事で気付いたらこの時間で…)」
「なるほど。あ、俺は1年C組の幸村精市。よろしくね」
「(わたしは1年A組の夕雲茜です)」
わたしが書いたメモをジッと見つめる幸村くんに首を傾げていると、『字、綺麗だね』と唐突に褒められてちょっと居心地が悪くなる。
いや、悪いとは違う…かも。
あまり褒められたりするのに慣れてないから、なんかこうくすぐったいというか恥ずかしいというか。
そんなことないよ、と小さく返事をすると幸村くんはクスリと笑って鞄を背負いなおした。
「夕雲さん。もう遅いし、女の子1人じゃ危ないから俺と一緒に帰らないかい?」
「………!」
そんなことしてもらうなんて恐れ多い!
わたしはブンブンと首を横に振って『1人で帰れるし、迷惑かけられません』とメモを書き始めると、その途中で幸村くんが動いた。
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