セブルス短編 | ナノ
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僕が好意を寄せているのは、赤い髪の幼馴染…ではなく。


「エイブリー!そこから動くなよー?」
「ちょ、待てミョウジ…!」
「それっ!」
「うわあああ!あっぶね…ッ!」


魔法で作った大きな雪玉を空中に浮かべて、逃げ回るエイブリーに笑いながら投げつけている彼女…ナマエだ。

僕自身も何故こんなお転婆で騒がしい奴を好きになったかはよく分かっていない。
笑顔、は可愛いと思う。
声も、高すぎなくて良い。
性格は…スリザリンには向いていない、とだけは確実に言える。


『え、もう闇の魔法そんなに使えるの?すごくない?てかその魔法薬も完璧じゃん!すごすぎ!天才かよ!』


初めて出逢ったあの日。
何の裏もない、真っ直ぐで素直なナマエを前にしてビリリと身体に電気が走るような感覚に陥った。

そして、それから彼女を見かけるたびに自然と目で追ってしまっていたしクリスマスやバレンタインには初めて女子(ナマエ)に贈り物というものをしてみたり。
この恋心を周りに知られたら十中八九からかわれることは分かっていた為、出来る限り隠してはいるが…じゃじゃ馬な彼女からは本当に色々な意味で目が離せないのだ。


「セブルスー!君もこっちに、っわ…!」
「ミョウジ!」


段差に上り?い位置にいたナマエが突然吹いた風に足を滑らせ、ぐらりと身体が傾いた。
エイブリーが焦ったように叫んで杖を向けるが、咄嗟の出来事ですぐに呪文が出てこない様子。

僕はといえば、その状況を確認して、そしてスッと自分の持っていた本へと目を戻す。


「…へ、あれ?」
「大丈夫か!?」


間の抜けたナマエの声が聴こえて、僕は思わず密かに口角を上げた。

予想していた。彼女があんな場所にいる時点で、今のような事態になることを。
だから予め、ナマエの落ちるあたりに魔法をかけて冷たく固まる雪をクッションのように柔らかくしておいたのだ。


「これはセブルスの仕業だー」
「仕業って、人聞き悪いな。助けてやったんだ」
「遊んでて怪我するのは自業自得だからいいんだし!」
「そういう問題ではない。大体、ナマエは落ち着きがなさ過ぎる。毎回ハラハラさせられるこっちの身にもなれ」
「何ハラハラって!そんな危ないことしてないよー」


呑気に笑うナマエの頭に、手に持っていた本をバシッ!と置いて痛がる彼女を鼻で笑う。
危ないことなどしていない?どの口が言う。


「後ろ向きで階段を上がって転び、話に夢中になり周りが見えなくなって柱にぶつかり、箒に乗り必要以上に回転して危うく落ちそうになったり。あとは授業で、」
「セーブールース」


ナマエは僕の唇に人差し指を当てて、それから今度は自分の唇へとその指を添えた。


「それは前までの話!セブルスと仲良くなってからは怪我すること減ったもん」
「…それは、」
「危ない時はさっきみたいにセブルスが助けてくれるって信じてるからわたしは安心できてるんだ」


助けてくれると信じている。
それはつまり、ナマエはこんな僕を頼りにしてくれているということだ。


「それにさー、実はセブルスが心配してくれたり助けてくれるのが嬉しくてね。あんな無茶するのセブルスの前でだけなんだよね」
「………っ」


えへへ、と無邪気に笑うナマエに一気に脱力する。

なんなんだもう。…呆れとか怒りとかそういう気持ちではない。僕の前でだけ、そんな特別が嬉しくて。
思わずにやけそうになる口元を咄嗟に隠していれば近くにいたエイブリーが肩を竦めていた。


「バレバレ」
「…っうるさい」


ニヤつくエイブリーに悪態をついて僕が立ち上がると、『そろそろ中に入ろうか』とナマエはローブについた雪を払って僕の隣に来る。


「次って何の授業だっけー?」
「魔法薬学だ」
「げ。最悪…」
「安らぎの水薬でバイアン草のエキスを加えるのはどのタイミングだ?」
「う、え?んーと…左に2回くらい撹拌して、おまけに右に1回撹拌して10分くらい煮た後!とか」
「…すごいな」
「え、なにもしかして当たってた!?」
「全部間違っている」


ムカつくー!と笑うナマエはいつも通り話に夢中になって周りが見えていないようだ。
僕は隣を歩くナマエより少し前に出て、彼女が何かにぶつかって転んだりしないように注意してみておく。

過保護でもおせっかいでも、何でもいい。
それによって僕に向けられるナマエからの"特別"があるのなら、何だって。


「これ刻むのかー。硬そう」
「それは危ないから僕がやる。ナマエはそれから出るエキスを、」
「オッケー!これ入れればいいんだね!」
「待て!違う、それは今じゃ…!」
「ッぎゃー…!」


はあ…こんな奴なんだ、目を離せるわけがない。
前髪をチリチリと燃やすナマエを見て、僕は苦笑したのだった。



君を好きな理由
(手のかかる子ほど可愛い…そういうことなのか?)



アンケートのコメントにてリクエストいただきました!
・好きな子に過保護な学生セブルス
…これを過保護と言うかは微妙なところです。



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