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人になった日(2/3)






どのお店に入ってみても魔法だらけの光景に、恥ずかしながらまるで子供のように心躍らせてしまいます。

さすがはヴォルデモート様。
そんなわたしの様子に気付いたのでしょう。買い物をしてる間に向けられる彼からの表情には呆れが見えました。

だって仕方ないじゃないですか!こんな風にお出掛けすることもほぼ初めてのようなものなのに、そこに魔法なんてファンタジーなものが加わったらテンションが上がってしまうのも必然。


「わあー…」


洋服や日用品を買い終えて、次に向かったのは本屋さんでした。
お店の中は少しだけ薄暗く、ぽわりとオレンジ色の灯りが本棚を照らしていてとても落ち着いた雰囲気のお店です。

ヴォルデモート様も見たい本があるようで、そこまで広くはないお店の中で一度分かれ、それぞれが気になる本を手に取っていました。


「”知っていて損はない!意外と役に立つ魔法薬のススメ”…」


魔法薬、というのはリドル様から聞いたことがあります。
それを一滴飲むだけで誰かを好きになってしまう愛の妙薬や、飲んだ者に幸福が訪れるという幸せの薬のお話など。

聞いているだけでもワクワクしてきてしまう内容のものではありますが、如何せん魔法使いでもないわたしが作ろうと思って作れるものではないのです。

しかし、残念です…。
こういった魔法薬の調合などができれば、わたしを傍に置いてくれているヴォルデモート様に僅かながらにでも恩返しができたかもしれないですし…。


「―…それに興味があるのか?」
「ひゃ。ヴォ、エリック…!びっくりしました…」


すぐ耳元で声がしてビクリと肩を跳ね上げて振り返ると、ヴォルデモート様のお顔がわたしの顔の真横にありました。

心臓がバクバク言ってますー…!もう、本当にびっくりです!

ヴォルデモート様は、わたしが驚いた拍子に床に落としてしまった本を拾うとご自分の顎に指を添えて何やら考え込んでしまいました。


「…買ってやろう。他は?」
「えっ。あの…買っていただけるのは嬉しいのですがわたしは魔法使いではな、っ!」


わたしの言葉を遮らせたのは、ヴォルデモート様の細く長い指。
唇に添えられた彼の指にドキドキと胸が高鳴ってしまって固まっていると、彼は小さく溜め息を吐きます。


「この魔法界で、自分が魔法族ではないことを公言するのは利口とは言えないな。…それが私の耳に入れば、その時点でそいつは排除対象となる」
「………っ」
「そう怯えることはない。おまえは幸運なことに、唯一例外が認められる特別な存在なのだからな」


ヴォルデモート様が喋る度に耳にかかる息が、熱いです。
そして何より、彼から”特別な存在”だと言っていただけたことがとても嬉しい。

わたしは両頬を手で覆って、小さく返事をするとヴォルデモート様はスッと離れていきました。


「他にも何冊か買っておけ。…ミアに魔力がないとは一概には言い切れない」
「…え!それは本当ですか!」
「詳しい話は帰ってからだ。早く選んでこい。私は待つのが嫌いだ」
「は、はい…!」


ヴォルデモート様の眉間に深い皺が寄ったのを確認して、わたしは急いで他に気になる本がないか探すことに。

それにしても、わたしに魔力があるかもしれないとはどういうことなのでしょうか…。
もしかしたらヴォルデモート様の魂の一部がこの身体に宿っていることと何か関係があるのかもしれないですね。

何にしても、わたしにも魔法が使えるかもしれない可能性があることに驚きです!

わたしの気分はお買い物が始まる前よりも更に昂揚し、早くお屋敷に帰りたいウズウズがしばらく止まりませんでした。


(Date became human2)


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