小説 | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -


紹介された日 (2/5)




このお屋敷に来た時にチラッと見ただけでも相当な広さなのが見受けられましたが、こうして実際に来てみるとその広さを更に実感しました。

お庭には何故か大きな孔雀がいるし、薔薇の庭園はあるし、噴水はとても大きくて綺麗。
このお庭だけで観光地になると言っても過言ではないほどの立派さです。

鼻に香る薔薇の匂いを嗅ぎながら、わたしはそんなお庭を散歩しているところです。


「(んー、まださすがに3時間は経ってないですよね…)」


話せるお相手でもいれば退屈しないのでしょうが、生憎、ヴォルデモート様以外の人と会ったこともなければその人が蛇と喋れるとは限りません。
言葉が通じないのであれば、この容貌ではやはり怖がらせてしまいますし…最悪は攻撃されてしまうかもしれない。

お屋敷にいる方々やヴォルデモート様の部下の方々に紹介してもらうまでは、誰にも見つからないように大人しくしてるのが賢明そうですね。

なるべく目立たないように、とお庭の外側を一通りお散歩し終えるとわたしはヴォルデモート様のお部屋へと戻ることにしました。



□□□



外に出る時もそうでしたが、お屋敷の中はシンと静まり返っています。
このお屋敷にはヴォルデモート様以外住んでないのかとも思いましたが、人の気配は時々感じるので他にも滞在している人がいるようでした。

わたしはなるべく壁沿いに身体を這わせて移動し、ヴォルデモート様のお部屋まで戻ります。


「(わ…っ!)」


視界の先に目的のお部屋が見えてきたところで、急に身体が何かに引っ張られてどこかの部屋へと放り込まれてしまいました。
重たい身体がドンと床に叩きつけられて全身打撲のように痛みます。

もう…誰ですか、こんな乱暴を働いたのは!とっても驚いたじゃないですか!
ペシン、と尻尾を床にぶつけて怒っていると頭上から声が聞こえてきました。


「ふーん。次の分霊箱は蛇か…」


若い男の人の声。

"分霊箱"という単語はヴォルデモート様もよく口にしていましたが、その言葉の意味はよく分かりません。
"箱"というくらいなので、ヴォルデモート様の魂の"入れ物"みたいな意味だと勝手に解釈していましたが…。

いえ、今はそれよりもわたしをこの部屋へ放り込んだ犯人に用があります。
頭を上げてその犯人であろう彼へ目を向けました。


「あいつが次に何を入れ物にするのかいくつか予想はしていたけど、まさか蛇とはね」


黒いローブに深緑のネクタイ、学校の制服のような格好をした黒髪で黒い瞳のかっこいい青年。
彼は椅子に腰かけて頬杖をつきながらブツブツと何か呟いていました。

またもや、既視感。
夢で見たあの子供の瞳は赤で、目の前の青年は黒ですが…雰囲気も顔つきも似ていて同じ人物だと思わざるを得ませんでした。
…となると、この青年はヴォルデモート様ということになってしまいますが…これは一体どういうことなのでしょうか。


「やあ、初めまして」
「(…初めまして)」
「…驚いたな。おまえ、人間の言葉も理解できるのか」
「(え!そうなのですか?)」
「…変な蛇」


ほら、そうやって呆れたように呟くこの感じもヴォルデモート様そっくりです。

密かに興奮していると、あることに気が付きました。
なんと青年の身体が青白く透けているのです。試しに、彼の手に頭を寄せてみましたが何かが触れる感触はありません。


「触れられないさ。僕はまだ実体じゃない」
「(幽霊ですか?)」
「いいや。僕は、君のご主人様の記憶なんだよ」


ヴォルデモート様の記憶。
学生服を着ている若い彼は、ヴォルデモート様の学生時代ということでしょうか。
それでも"記憶"という目に見えないはずものが、こうして"人"として姿を現せていることに驚きを隠せません。

そしてやはり、目の前の青年はヴォルデモート様で間違いないようです。


「さあ、分霊箱も見れたことだしもう行っていいよ」
「(わたし、名前をミアといいます)」
「そう。じゃあね、ミア」


彼がわたしに触れられないことをいいことに、わたしを部屋から出したがる彼の足もとに丸くなって見上げました。

ヴォルデモート様が帰ってくるまであと2時間以上あります。
ここでさようならというのも何だか勿体ないような気もしますし、彼には是非ともわたしのお話し相手になってもらいたいです!
それにヴォルデモート様のことや魔法のことについても色々と教えてもらいたいですし。


「…なに?」
「(もう少しお話しませんか?)」
「蛇のくせに生意気だよ」
「(む、今は蛇でも元は人間です)」
「へえ、なるほど。…いいよ、暇だし話し合い相手になってやる」
「(ありがとうございます!ヴォルデモート様)」
「ヴォル…ってその呼び方、あいつと被るから。僕のことはリドルと呼べ」


リドル様はそう言って立ち上がり、ソファの上に腰をかけます。
わたしは彼の座る左隣に身体を落ち着けて、リドル様にピッタリくっつきました。


「生意気」
「(あう…!)」


リドル様に軽く頭を小突かれますが、あまり痛くありません。

それからヴォルデモート様が怒ってこのお部屋に入ってくるまで、わたしとリドル様は随分と話し込んでしまったのでした。