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ずっと好きだった。
家が隣同士で、小さい頃からずっと一緒にいて。

わたしはあまり魔力が弱いらしくてスクイブなんじゃないかって両親には言われてたけど、11歳になればホグワーツから入学許可証が届いて、”彼”は自分のことのように喜んでくれていた。

これから先、ホグワーツでは楽しい学校生活が送れるものだと確信していた。…だけど。


「やあエバンズ!今日も可愛いね!おや、髪切った?そんな君も素敵だよ」
「喧しいわよポッター!私に近づかないで!」


ひとつ隣のテーブルに座る彼は、いつものように騒々しい。
わたしが赤い髪だったら、瞳がグリーンだったら、もっと美人だったら。彼はわたしを見てくれただろうか。

ホグワーツへ入学するあの日、ジェームズ・ポッターは1人の女性に心を奪われてしまったらしい。
彼が彼女と出逢う前に、この想いを伝えていれば何か変わったかもしれないとこれほどまでに後悔することはない。

そして追い打ちをかけるように…わたしは、うちの家系では誰一人として選ばれることのなかったハッフルパフに組み分けされてしまったのだ。
今だって、大広間という同じ空間にいるはずなのにこんなにも彼が遠く感じる。

ジェームズがエバンズさんへと言い寄るあの光景ももう3年目になるのに、あれを見る度にわたしの胸は激しい痛みを訴えていた。


「はあ……」


味気のない食事に手が進まず、わたしが人知れず溜め息を吐く。

もう諦めてしまえばいいのに。…そんなに簡単に諦められたら苦労しない。
心の中で自問自答して、グサリとプチトマトにフォークを刺せば誰かに手を取られてそのままその誰かの口の中へ放り込まれた。


「…カルヴァント」
「嫌だな。名前で呼んでと何回言ったら分かるんだい?」
「カルヴァントだってあなたの名前でしょ」
「はは、屁理屈だなあ。もしかして機嫌悪い?」
「…見ての通りよ」


同じハッフルパフ生のエイヴ・カルヴァント。
何故かわたしによく絡んでくる意味の分からない奴。

彼が口をつけたフォークをコトリとテーブルに置いて、小さく溜め息を吐いた。


「クククッ…」
「…なに笑ってるのよ、気持ち悪い」
「いやいや。本当に面白いね君の幼馴染って」
「幼馴染…ジェームズのこと?」


ニヤリと顔を歪めて、可笑しそうに笑いだすカルヴァントに不快感を抱く。
絶対、良い意味で言ってるわけじゃないのは分かるから。


「歪んでるねえ、奴の愛し方は」
「…あなたが何を言ってるのかさっぱりだわ」
「知らない方が幸せなこともある。君の場合は少々手遅れのようだけど」
「それってどういう、」

「−…ナマエ」


耳に響いたのは、ずいぶん久しぶりに聴いた彼の声。
いつの間にハッフルパフのテーブルに来ていたのだろう。

驚きすぎて何も声を出せずにわたしを見下ろすジェームズを見れば、その丸眼鏡の奥の瞳に明らかな怒りが見えた。


「ジェー、っ」
「来なよ」
「ちょっと…!」


強い力でわたしの腕を掴んだジェームズは、半分引き摺るようにしてわたしを大広間から連れ出した。


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