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大体の生徒は大広間にいる為、いつも人が賑わう廊下はシンと静まり返っていた。
わたしの腕を掴んでズンズン進んでいくジェームズは、大広間を出てから一度もこちらを振り向いてはくれない。

こんなにも強引で、ジェームズはなぜか怒っていて、その理由も分からなくて頭の中はハテナだらけなのに。


「…っジェームズ」


久しぶりに触れた彼の手に、胸が熱くなった。

ジェームズはどこかの空き教室に入ると、バタン!と勢いよく扉を閉めてわたしを壁に追い込んでくる。


「なんで…」
「……っ?」
「ナマエは、僕が好きなんだよね?」
「な、どうして…!」


ジェームズに対する想いがバレていた。

一気に羞恥で身体の熱が上がり、今すぐここから立ち去りたくなる。
だけど、顔の横に置かれたジェームズの腕がそうさせてはくれなかった。


「知ってるよ。だって君が僕を見る目は、僕が君を見る目と一緒だったからね」
「ジェー、ムズ…?」
「それを知った時はそれはもう嬉しかったよ。まあ、仮にナマエが僕を好きじゃなくてもナマエは僕のだけど」


暴走気味に喋り出すジェームズに、わたしは戸惑うしかできない。
結局、ジェームズは何を言いたいのだろうか。


「ホグワーツに入学するとき、僕がエバンズを見て”綺麗だ”と呟いたのを聞いて、ナマエ…ちょっと悲しそうな顔したでしょ。それが、良かった。ものすごく」
「…は、?」
「ナマエの悲しそうな顔、苦しそうな顔。全部僕のことを好きだと想ってるからこそのもの。もっと見たい思った。だから、わざと君から離れてエバンズに近付いた」


知らなかった。いや、分かるわけがない。
ジェームズの、こんな、”異常”とも呼べる思惑なんて。


「…エバンズ、さんのことは…」
「ん?別に好きでも何ともないよ!だって僕はこんなにもナマエを愛してる」


ニッコリ笑うジェームズ。

嬉しいのに、嬉しいはずなのに、素直に喜べない。
それはきっと、ジェームズの”異常”をいくら考えても理解できないからだ。


「だから、僕のナマエに近づこうとする奴らは牽制してやってた。それなのにあのカルヴァントとかいう奴…あいつだけはどんな事をしてやっても次の日には平気な顔して君の隣に居座る。…本当に気に入らない」


唸るようにそう言うジェームズの瞳があまりにも鋭くて、わたしは思わず顔を引きつらせてしまう。

別に今の事を聞いてジェームズを好きじゃなくなるとかそういうわけじゃないけど、なんだろう…この複雑な心境は。


「あと2年くらいは今の感じでいきたかったんだけど、あまりにもカルヴァントがうざいからもうやめる」
「そ、そっか…」
「これからはずっとナマエの傍にいて、僕以外見えないようにしてあげる」


わたしの顎にそっと指を添えて、それからペロリと唇を舐められた。
カーッと顔に熱が集まるのが分かり、ジェームズを直視できなくなる。

だってこの3年間、ジェームズの訳の分からない考えで距離をとられていたのに今になってこの急発展。もう色んな感情がごちゃ混ぜで思考が回らない。


「…良いね、ナマエのそんな表情も」
「ジェームズ、」
「なんだい?」
「伝えるのが遅くなったけど、わたしも…ジェームズのことが好きよ」


そういえばまだわたしは言ってなかったな、と落ち着かない思考のまま伝えればジェームズはキョトンとして。


「当たり前さ!ナマエと僕は死ぬまでも死んでからも一緒だよ」


それから嬉しそうに頬を緩めてそう言う。
そんなジェームズの過剰な愛を全部受け止めきれるかと不安になるけど、それが過剰でも、彼がわたしを好きだと想ってくれるのは素直に嬉しい。

…ただ。


「ねえ、噛んでいい?」
「…何でよ」
「僕さ、ナマエの痛がってる顔も好きなんだよね」
「…っ変態!」


ジェームズの性癖だけは一生理解できなさそうだけど。
わたしを抱き締める彼の腕の中で、わたしは人知れず小さな溜め息を吐いたのだった。




歪んだ愛し方
(それでも好きだなんておかしいかしら)


アンケートのコメントにてリクエスト第2弾。
・ヤンデレなジェームズくん
…これは果たしてヤンデレなのだろうか。


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