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溢れ出る魅力 [ 4/6 ]



まずはルーヴェントと接点を増やすところからだ。

そう考えたその日の魔法薬学の授業。
ジェームズ達の協力によって僕はルーヴェントと2人ペアを組める、はずだった。


「ルカ!一緒に組みましょ?」
「オーケー」


ガーン。
今の僕に効果音をつけるならまさにそれ。

ルーヴェントをペアに誘ったのは、あの日大広間で彼女にボロクソ言われてブチ切れていたアシュリー・グラハム。
てっきり彼女達は仲違いしたんだと思ってたんだけど…。


「ふうむ、これは誤算だった」


ジェームズが唸るように言う。


「グラハムのやつ、あれだけ言われても結局はルーヴェントから離れたくないらしい。まあ…あの2人は幼馴染らしいからな」


シリウスが手際よく芋虫を刻みながらそう呟いた。

そうだったんだ…。
ルーヴェントとペアになれることを確信していたし、授業の内容の他に何を話そうかと昨夜は徹夜して考えたのに。


「はあー…」
「そ、そんな気落ちすんなって!まだいくらでもチャンスはあるだろ」
「そうだよリーマス。で、落ち込んでるとこ悪いんだけどピーターのことちゃんと監視しててくれるかい?」


ジェームズにそう言われて初めて、僕はピーターの方へと視線を映した。


「っ、ピーター!」
「ヒッ!あ…っ!」


ピーターが魔法薬の調合を失敗するのはよくあることだった。
声をかけたけど、時すでに遅し。

鍋を火から下ろさないうちに調合材料を投入してしまったせいで中身が凄まじい勢いで爆発し、飛散していく。


「きゃー!あたしのローブが…!」
「痛ぇ…!手にかかった!!」


阿鼻叫喚の地獄絵図。

近くにいた僕にも薬品が飛び散ってきてローブはボロボロで顔もヒリヒリして痛い。ピーターは痛い痛いと蹲って泣いている。

ジェームズは一目散にエバンズを庇い、シリウスは反射神経の良さで咄嗟に机の下に避けたみたいだった。


「くっ…痛い、なもう!」
「ルカ!大丈夫!?」


そんな声が聴こえて僕はビクリと肩を震わせた。

ルーヴェントは痛みに顔を歪めながら左目を抑えてしゃがみ込んでいる。
ああ、まさか彼女にまで怪我をさせてしまうなんて…!


「ルーヴェント…っ!」
「、え…あ。ルーピン?」
「どこが痛いの?まさか目に入った?」


スラグホーン教授のたどたどしい声と、生徒の騒がしさのおかげで僕の行動は目立っていない。
素早くルーヴェントに駆け寄った僕を怪訝そうな表情で見てくるグラハムを気にしないようにして、声をかけた。


「目に、入ったかも。焼けるように痛いんだ…っ」


彼女の目からは涙がポロポロと零れ落ちていて、不謹慎なことに僕はそれをとても綺麗だと思って魅入ってしまう。


「軽傷の子は私のところへ来なさい!怪我が大きい子はすぐに医務室へ行くように!」


スラグホーン教授の声でハッと我に返ったのと同時に、腕をすごい力で引っ張られた。


「ちょっとルーピン!!ぼけっとしてないでここまで来たならとっととルカを医務室まで運ぶとかしたらどうなの!?」
「あ、うん…っ!」
「ちょ、ルーピン!?」


グラハムにけしかけられて僕は勢いでそのままルーヴェントを抱き上げた。所謂お姫様抱っこ。

こんな、いきなりレベルの高いことするつもりじゃなかったんだけど…。

抱き上げた彼女からふわりと香る甘い匂い。
それには、僕も大好きなチョコレートの香りがほんのり混じっていた。それはまるで麻薬みたいで、僕はクラリと眩暈を起こしそうになる。


「…ルーピン、」
「ごめん、いきなり。あ…僕が嫌なら他の人に頼んで、」
「いや、大丈夫。ありがとう、ルーピン」


実は足にも薬品がかかって歩けそうになかったんだ、と潤んだ瞳で僕を見上げてくるルーヴェント。
その頬はほんのりピンク色に染まっている。そんな可愛らしい彼女の様子に今すぐ悶えたくなるのを必死に耐えた。

そしてこういうこと(お姫様抱っこ)には慣れていないようで、僕は少し安心する。


「でも、おんぶの方が運びやすくない?わたし重いから」
「まさか!羽みたいに軽いよ」
「んなわけ…!」


からかうな、とちょっと睨まれたけどそんな顔でも彼女はかわいい。
ルーヴェントとペアになれなかったのは残念だったけど、これはこれで良い結果だ。


「…ルーピン、なんでそんな機嫌良いかは知らないけどもう少し急いでほしいな。だいぶ痛みがひどくなってきたんだけど」
「ご、ごめん…!」
「うあっ、ちょ!はやい!」


僕はそれから駆け足で医務室まで辿り着き、彼女をマダム・ポンフリーに無事託した。
ここにくる途中にフィルチとマクゴナガル先生に怒鳴られたけど、そんなことよりルーヴェントの方が大切だ。


「じゃあ、僕はこれで」
「あ!ありがとう、ルーピン。これ、あげる」


そう言って手の平に乗せられた、色とりどりの銀紙に包装された小さなチョコレートたち。

そして初めて向けられた、純粋な彼女の笑顔。
…最高すぎる。何もかも。


「…ありがとう。僕、チョコレート大好きなんだ」


急上昇する僕の体温でチョコレートが溶けてしまわないように、ローブのポケットにそっと仕舞った。



(そして君のことも)


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