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逆境で生まれる力 [ 2/6 ]



僕には彼女しかいない。
本能的に、直感的に、そう思ったんだ。


「はあ…」


何回目になるか分からない溜め息を吐きながら、中庭のベンチに腰掛けて本を読む綺麗な横顔を見つめる。

彼女はルカ・ルーヴェント。
同じ寮だから名前は聞いたことはあるけど、こんなにきちんと彼女の顔を見たのはホグワーツに入学してから5年も経った今が初めてだった。


「まーた見てるよ、リーマスの奴」
「まあ、あの時のルーヴェントの発言には僕も驚いたけどまさか恋しちゃうとはねぇ」


シリウスとジェームズがニヤニヤしながら僕を見てるけど、そんなの気にしない。

だって彼女はきっと、僕の運命の女性なんだ。

人狼というものに偏見を持たず、たとえ大切な人が人狼であっても何も変わることはないとハッキリと言い放った彼女。

あの日から、僕はルーヴェントの虜になってしまった。


「まるで王子様に恋するお姫様みたいだね、ムーニー」
「僕が姫っていうのはおかしいと思うけど、的は得てるよ」


僕をからかおうとしたのだろうジェームズはビックリしたように目を見開いてから、ポリポリと頬をかいていた。

この会話の最中もずっとルーヴェントのことを見つめてたら、彼女は不意に本から目を離してキョロキョロと辺りを見回す。
どうしたんだろう、と不思議に思っているとバチリとルーヴェントと目が合った。


「…ルーピン?」
「へぁ、えっと…あ、なに?」


まさか話しかけられるとは思ってなくて変な声が出てしまう。

羞恥と、彼女が僕のことを知っていたということに歓喜に気持ちがぐちゃぐちゃだ。

今すぐ穴があったら入りたいとも思って視線を泳がせれば、いつの間にかジェームズ達は姿を消していた。
いや、ピーターだけは草陰に隠れてガクブルしてたけど。


「なにって、こっちのセリフ。ずっと見てたでしょ、わたしのこと」
「え!あー…うん、いやー…」
「何が何だか分からんけど、用があるならきちんと話しかけてもらえる?誰かからの視線だけ感じるのってけっこうな恐怖なんだぞ」


困ったように小さく笑ったルーヴェントの綺麗な笑みに、僕の胸がドクンと音を立てる。

こんな、ドキドキしてたら…彼女に聴こえてしまうんじゃ。
苦しいくらいに煩く鳴り出した鼓動に、僕はギュッと胸のあたりに手を当てた。


「ルーピン?…大丈夫?」


そう言いながら僕の顔を覗き込み、僕の頬に、彼女の手が触れた。


「あ、へっ平気だよ!ごめん、ルーヴェント…!」
「あっ!ちょっと、」


ピーターの首根っこを掴んで引き摺り、僕はダッシュでその場から逃げ出す。

だって、死ぬかと思ったんだ。
あんなにドキドキして、彼女に触れられたところから身体中にブワッて熱が伝わってきて…。


「リーマス、顔真っ赤だよ!?」


そう叫んだピーターの口をバチンと手で塞いで、僕は大きく深く息を吐いた。

もっと、ルーヴェントに近づきたい。
もっと、話してみたい。
もっと、知りたい。
もっと、触れてみたい。

ジェームズのエバンズに対する気持ち、今ならよく理解できるような気がする。



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