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予期せぬ出会い [ 1/6 ]




「ねえ、彼氏とか友達とかが実は人狼とかだったらどうする?」


ふと聞こえてきたそんな会話にビクリと肩が揺れた。

同じ会話が聞こえたであろうシリウスとジェームズが「気にするな」と目で気遣ってくれる。
グリフィンドールテーブルのそう遠くない席で、彼女たちの会話は進んでいく。


「えー、私だったらもう即別れる!だって噛まれたら終わりだよ?人狼になんて絶対なりたくないし!」
「確かにー!ていうかあんな凶悪な生物が身近に潜んでるって考えるだけでも怖いし、なんか気持ち悪くない?」


フォークを握る手が、震えた。
震えて、止まらなくて、気を抜けば手からすり抜けていきそうで。

分かっていたけれど、忘れそうになっていた。
僕は人狼で、周りからは蔑まれ、嫌われて、いない方が人の為になるようなそんな…存在だ。

ジェームズ、シリウス、ピーター。
僕の近くにいる彼らがあまりにも優しくて自然に僕を受け入れてくれているから、忘れて…。


「…っおい、」
「ダメだよシリウス」
「ジェームズ!でもよ…」
「ここで変に首突っ込んでそれこそバレれるようなことになって、一番傷つくのは誰だい?周りがどう思ってようがどうでもいいだろう」


彼女たちに声をかけようとしたシリウスを牽制して、だけどジェームズは眼鏡の下の瞳をとても鋭くさせて彼女たちを睨んでいた。

そうだ、周りはどうでもいい。
僕にはこんなにも心優しい友達がいる、それで十分だ。

ありがとう、という呟きが聴こえたのかジェームズは親指を立ててニヤリと笑った。


「ねえ、ルカはどう思う?人狼!」


話は止まることを知らない。

気にするなと言っても耳に入ってくるから、気分は悪くなる一方だ。
僕の友人達も同じことを考えたのか、食事を早々に終えて大広間を出ようと席を立った時だ。


「くっそどうでもいい」


凛として真っ直ぐとした声音に、出口に向かう足がピタリと止まった。


「ど、どうでもいいって何よもう!」

「どうでもいいでしょ。アシュリーさ、今の彼氏のこと『大好きすぎてやばーい!彼のためなら死ねる!愛してる!』とか毎日のように惚気てくるくせにその彼氏がたかが人狼だったからって即別れるとか…あんたの愛してるってそんなもん?」


ルカ、と呼ばれた彼女がそこまで言い終えてハッと鼻で笑えばアシュリー・グラハムは顔を真っ赤にさせる。
今まで食事に夢中だったはずの誰もが、彼女たちに注目していた。


「か、彼氏もいないあんたに言われたくないわよ…!」

「彼氏がいるとかいないとかそんなもん関係ある?今の話に。まあ、もしわたしに彼氏や親友がいて、その人が人狼だったとしてもわたしがその人を好きだという気持ちは変わらないだろうね。人狼だから何?って感じ」


それと、と彼女は続けた。


「あんたがそんなくそどうでもいいことで即別れられるくらいの浅い『愛』をお持ちなのはよく分かったから、わたしの大切な食事の時間を邪魔しないでくれる?」


今にも杖を取り出しそうなほど激昂しているグラハムなんてお構いなしに、彼女は優雅に食事を再開させる。

周りは唖然としていた。そして僕も、友人たちも。


「―…なに見てんの。しばくよ?」


そう不機嫌そうに細められた深いブルーの瞳と、目が合った。


(そして僕は囚われた)


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