小説 | ナノ
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -
逆境で生まれる力 [ 3/6 ]




中庭での僕のヘタレっぷりを見たらしいジェームズに呼び出されて、いつもの4人で輪を作る。

ヘタレとか自分で言ってて情けないけど、否定できないから複雑だよ…。


「じゃじゃーん!見よ、ルカ・ルーヴェントの情報が詰まったメモ!」


ジェームズが自信満々に取り出したのは小さめの羊皮紙で、箇条書きで何かがビッシリ書かれている。


「すげーな。スリーサイズまでバッチリじゃねぇか。お、意外と胸でかぐふ…っ!」
「シリウス、殺されたいのかい?…ジェームズも」


僕が好意を寄せる女性へのセクハラ発言は許さない。

右隣にいたシリウスに右手で思い切りグーパンすると、ベッドから滑り落ちてノックアウトしていた。
それからジェームズを睨みつけると「まあまあ、落ち着いて」と言いながらも青い顔をしながらシリウスを見ている。


「情報通の僕がかき集めたルーヴェントのできる限りがここに書かれてる。彼女を射止めるためにも、リーマスに教えてあげようじゃないか!」
「ありがとう。で、早く知りたいんだけど」
「…ごほん。えーっと、名前はルカ・ルーヴェントで、AB型で誕生日は12月1日で…」




▽▽▽


「で、好きな食べ物!これは話のネタにもなると思うよ。リーマス!ルーヴェントは君と同じで、チョコレートがすごく好きみたいだ」
「え、!」


ルーヴェント自体が謎の多い人のだけあって、ジェームズの集めた状態は何ら中身の無いものが多かった。

だけど、彼女は僕と同じでチョコが好き。
それは確実なる朗報だった。

「うわー、すげえ嬉しそうな顔」と呟いたシリウスの腕を抓る。
そりゃ嬉しくもなるだろう。
彼女に近付けるきっかけが出来たんだから。


「それにしてもよ、ジェームズはそういう情報どっからとってきてんだ?」
「ああ、ほら。僕たちがホグワーツに入学した当初、初めての魔法史の授業でビンズ教授に自己紹介シートみたいなのを書かされただろう?それをちょろっと覗いてきただけさ!」


僕にはこれがあるからね、とジェームズがドヤ顔で透明マントをヒラヒラ揺らす。
そのマントを被れば身体を透明にして隠してくれる便利すぎる代物。

ジェームズ、絶対に他のことにも悪用してる気がする。例えば…。


「この間さ、女子達が別教室で着替えしてたのを偶然見ちゃって…。リリーは真っ赤なフリル次の下着だったよ!なんて魅力的なんだろう!」
「おいおい…まさかそれ透明マント使って覗いたのか?」
「覗いたなんて失礼な!あの空き教室に細工してた時に急に入ってきたもんだから咄嗟の行動さ。正当防衛だよ!」


その時の光景を思い出したのか、ジェームズの鼻からはそれこそ真っ赤な液体が垂れていた。

…ほんと、僕の友達ながらこの馬鹿さ加減にはほとほと呆れるよ。


「あ、ルーヴェントもいたよ!確か、黒のレースでちょっと透け感のある…っいだァ!!」
「もう二度と彼女を見れないように…目、抉ってあげてもいいんだよ?」
「ご、ごめんごめん!悪かったよムーニー!君に教えてあげようと思ってさー」


まさかエバンズだけに飽き足らずルーヴェントの下着まで見て、しかもバッチリ覚えてるだなんて。
今すぐその記憶だけオブリビエイトしてやりたい。

おかしいな。僕は本来こんなにバイオレンスじゃないはずなのに、彼らといるとどうも手が出ることが多くなる。
まあ、僕に落ち度なんかないんだけど。

ジェームズはヒビの入った丸眼鏡をクイッとかけ直して、さっきまでふざけていた表情を少しだけ真面目なものに変えた。


「最後の情報なんだけど…多分これ、一番重要」


そう小さく言い放ったジェームズは、忍びの地図を取り出すとそれをベッドの上に広げる。

彼が指した杖の先をゆっくり目線で追えば、そこには…。


「周りにバレないようにしてるんだろうけど…この2人、付き合ってるっぽい。たまに見るとけっこう一緒にいること多いんだ」


3階の空き教室に、アラン・クロスリードとルカ・ルーヴェントの文字。

僕の胸が、嫌な音を立てた。
そして次に感じたのは、凄まじい程の嫌悪感。そして腹立たしさ。


「ー…諦めないよ、僕は」


呟いた声に、ジェームズもシリウスも目を見開いた後にニッと笑った。


「「協力する」」
「あ、えっと!僕も…っ」


彼女の隣には、僕がいたい。
僕の隣にも、彼女にいて欲しい。

ルーヴェントに恋人がいたのはショックだけれど、そんなことで諦められるような軽い気持ちじゃない。

僕は3人に感謝を述べてから、忍びの地図を早急に折りたたんだ。



(さて、これからどうしようかな)


[*prev] [next#]
top