※幸村君入院してません


おはよう、と声をかけられるため、適当に返事をしながら教室に向かう。今日の朝練はあまり変わらない、いつも同じ感じだった。あ、赤也が遅刻じゃなくて珍しく遅刻ギリギリだった。真田がたるんどるって五月蝿かったのは変わらなかったけどね。正直言って暇。授業も淡泊だし、これと言って変わったこともない。たぶん、蓮二に言えば、面白いことの一つは教えてくれるだろうけれど。


「よっ、幸村!」
「おはよう、幸村君」
「ああ、おはよう」

教室に入れば、おはようとクラスメートに言われるから適度に返事をし、自分の席に着く。真ん中の列の一番後ろ。そこが俺の席だ。ここはいい。一番後ろだから、背後の女子とかに気をやまなくてもいいし、なんて言ったってクラスを見渡せる。授業中の人間観察とかは、蓮二じゃないが結構面白かったりする。お気に入りの詩集を取り出しながら、ぐるりと教室に一回目をやった。野球部の男子が自分の席からごみ箱にペットボトルが入るか投げようとしてる。学級委員が英語の課題を出してない奴に声をかけてる。寝てる奴もいるな。女子は相変わらず、グループをつくるのが好きみたいだ。どうやら、いつも俺と一緒にいる奴らはまだ来てないみたいだ。だったら、詩集でも読もうか、と思った時だった。

--カタン、と小さな音をたてて、斜め前の席に女子が座った。ん?なんか、いつもと違う、みたいな。いや、斜め前の席は女子の席なんだけど、確か、そこはみょうじさんの席で。みょうじさんと言えば、黒色で背中につくぐらいの長さで綺麗な髪だった、気が、するんだけれど。そこに座った女子は、肩につくかつかないぐらいの髪で、同じなのは黒髪で、ストレートっぽかったみょうじさんに比べ、微妙に癖がついている。…いつのまにか、席替えをしたのだろうか?いや、でも他の席は変わっていない、し。

「…えーと、ねえ、」
「え?」

とりあえず、確認しようと思って、声をかける。振り向いた女子は、どうしたの幸村君、と言う。え、この声、

「…みょうじさん?」
「そうだよ?」
「…え、あ、髪切ったの?」
「うん」

髪を切ったのかと聞けば、照れ臭そうにふわりと笑ったみょうじさん。え、なに、可愛い。癖のついた髪がふわりと揺れた。…おかしいな、俺、長い方が好みのはずなんだけど。そう思いつつ、似合ってるねと返せば、また照れ臭そうに笑ったみょうじさんはありがとうと言った。

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