青学からの使者


いくつかの国が存在するこの世界で、戦が主要国間で行われていないのは、交流があるからというのが一つの理由だ。立海と氷帝の様に比較的友好な関係を、保ちあっている国があるのも事実。
それ以上に戦をなしとしている理由が、世界競技とされるテニスだ。立海王国が世界の中心と認識されているのは、そのテニスにおける圧倒的な力によると考えられる場合もある。王国の持つ長い歴史なども、偉大な王国である理由の一つでもあるが、テニスが一番大きいだろう。

そして、氷帝の様に。正しくは、幼馴染みの景吾の様に。勝ち気であり好戦的で、テニスも俺達とほぼ同じ力を持つ国は多い。近頃こそ、立海が頂点に立ち、王者と崇められているが、正直主要国の力のレベルとしては、ほぼ変わらない。立海王国の王である俺が言うのもなんだが、立海が王者とされるのは、国への信頼や人柄から来るのだと思う。

上にも述べた様に、好戦的な国は、主要国を始めとし、とても多い。だが、ここまではっきりと宣戦布告をしてきたのは、この国が初めてだ。


「…随分と自信があるんだね」


俺は応接間で相手が差し出してきた封筒から出した紙切れを持って、笑った。相手はつまらなそうにあくびを一つして、それから用意された紅茶に何倍か砂糖を入れてから口を開いた。


「俺は、テニスが出来ればどっちでもいいんスよ。政なんて、関係ないし」


こっちのが強い相手とやれるって話だったから。と越前リョーマは笑った。彼は、青学の遣いで来た。本人曰く、政治関係者ではないらしいが、青学の団体戦の新しいメンバーなだけだと。それだけでないことを俺は知っているけど。

越前リョーマ。
あの、越前南次郎の一人息子だ。越前南次郎は、青学の先々代の首脳だ。そして、越前家は代々政に関わっている家系である。そして、越前南次郎は、テニスでは負けなしのプレイヤーだった。サムライ南次郎という呼び名が着いたのは、首脳を若くして辞任し、単身でニューヨークやウィンブルドンといった、小さな島だが、テニスの発祥地と呼ばれる国々に渡ってからだ。だが、その呼び名にふさわしく、そして、テニス最強と謳われた実力である。その、息子だ。それだけで終わる訳がない。

俺が彼から受け取った封筒には、「公式練習試合の申し込み」と書かれた書類。今の首脳である、竜崎スミレと名前が下の方に記入されている。このおばさん(それでも確か、サムライ南次郎の姉貴分で、50歳はいってなかったはずだ)、青学の団体戦メンバーの監督だったな、確か。とため息になりそうもない息を小さく吐いた。


「いいだろう。場所はこちらで用意するよ。詳しくはこちらから遣いを出すよ」
「よろしくっす」


にやり、とまた笑った坊やに、同じ様に笑みを浮かべて返した。





「えっえっ?どうしたの?赤也」


そう言って、お兄様のお部屋に駆け込んで入ってきたのは、この王宮に仕えている中で私と関係がある人達の中で一番私と年が近い、赤也。執事という立場を取る赤也は、参謀である蓮二さんを尊敬してやまない。あと、テニスの公式団体戦メンバーの一人で、テニスがとっても上手。



「えっ?あれ?なまえ?精市さんは?」
「私もお兄様と約束があったんだけど…」



あれー、と後頭部に手をやってから、んーと少し唸っていた赤也は、まあ座って紅茶でも入れると言ってくれた。流石、執事というか、紅茶を入れる手つきは綺麗だなあ。
赤也は、そそっかしい場面もあるんだけど、家が代々執事の家系で、それこそ小さい頃からお父様の後ろをついて回っていて。ちなみに、赤也のお父様は私のお父様の執事長だった。だから、赤也は料理だって掃除だって、なんだって出来る。執事長は今は違う人だけど、いずれ執事長になるのが夢だって言ってた。はい、と座ったソファの前のテーブルに紅茶が置かれた。赤茶色の、色のいい紅茶。その横にミルクの入った小さな瓶と砂糖の入れ物が置かれる。



「赤也ー、学校のお話をしてくれない?」
「またかよ…。まあ、いいぜ」



そうやって笑って赤也は学校の話をしてくれる。
赤也は初等部の頃は郊外の学校に通い、城下町の貴族などが通う学習院に入ったのは中等部からだと聞いていて。そのお話をよく聞かせてもらう。


私が、行ったことのない学校は、どんな所なんだろう、


120810
政は「まつりごと」って読みます。政治のことですね。ちょっと竜崎先生の年齢と関係性をいじくりました


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