再会と理由

さて、あのあと忍足から離れながら、景吾になぜいきなり今日来ることにしたのか聞かれて、白石さんのことを思い出した。
私は兄様と違い、城下町の学校には通っていない。執事のマサとヒロに家庭教師をやってもらっていて、だから氷帝王国に来る以外は母様と父様に会いに行くぐらいは城から出たことはない。そして必然的に友達は居ない。城下町の学校に行ければ一番いいのだけれど、私は行けない。代わりと言ってはなんだけど、兄様のお友達や景吾達が相手をしてくれるから、寂しいと感じたことはないけれど。私が城下町の学校に行かない理由を立海の王宮の皆は知っているし、氷帝では景吾と忍足、そしてジローさんが知っている。だからか、皆は私に優しくしてくれているんだろうし、相手をしてくれるんだろうと思う。こんな10近くも離れた子供に。…そこまで考えてやめた。これを前、兄様と景吾に言ったら、兄様は黒い笑みで。景吾は真っ青になって。馬鹿だとかそんなことねえとか。言われて。それからは、もう普通に甘えたりしてるけどね。…そう。だから、私には同世代の友達がほとんど居ない。そして、年上の人との接し方しか知らない。まあ、赤也はまた別だけれど。
だから、白石さんもいずれその理由を知るのだろうけど、ひとまずこれからは私の相手をしてくれるのかと思ったら、急に恥ずかしくなった。それをそのまま景吾に言えば。




「…白石の野郎。まだなまえはやんねえからなあ!」



どういうことだと忍足を見れば、苦笑された。そのまま景吾は握り拳を作って何か言い出したから、仕方なしに忍足に助けを求める。笑ってため息をついた忍足は景吾に声をかけた。



「なまえちゃんほったらかしでええの?」
「っ!…なまえ、今日は夕飯食べてけよ」
「え、うん。そのつもりだったから丸井に夜食頼んできたの」



そう言えば笑って太るぞとか言うから、私は思いっきり景吾の左腕を叩いてやった。いてぇなあ、と笑って言った景吾はそうだ、と立ち上がってそのまま私に手を差し出す。その手に自分の手を重ねて私も立ち上がる。







「お前が欲しがっていたベルリン諸国の原本がこないだ届いたんだよ」



廊下を歩きながら景吾は言った。ちなみに今も景吾とは手をつないだままだ。昔からよくこうやって歩いたなあ、と思いつつ、その言葉に咄嗟に立ち止まってしまった。



「嘘!?」
「本当だ。書庫にあるから、どうせ言ったら読みたいって言うだろうからな。今、向かってる途中だ」



そっか、この廊下見慣れた感じだなって思ったら書庫に向かってたんだ。…正直言って、立海の王宮より氷帝の方が大きいから、小さい頃から来てる私も知らない場所があるし、迷う。確実に知らない道に入ったら迷う自信がある。後ろに忍足が付いてきてる気をしないでもないが、…まあ、いっか。あいつロリコンとかそういうのじゃなさそうだし、もし血迷っても隣には景吾が居るし。



「あっなまえちゃんだC!」



遠くからそんな声が聞こえてきて、その方向を見れば、ジローさんが大きく手を振ってこちらに走ってきた。久しぶりーとコック姿のまま帽子を取って一礼をしてからそう笑顔で抱き締められた。お久しぶり、と彼の腕の中で返せば、そうだ!とジローさんは私からはなれて景吾を見た。



「けいごー。今日の夕飯、晩餐使用でE?なまえちゃん食べてくんでしょー?」
「ああ、頼む」



そう景吾が頷くとジローさんはがしっと私の手を握って目をキラキラさせて言った。



「丸井君みたいにほっぺ落ちちゃうーって程じゃにけど、すっげえうまいスイーツ作っから、ぜってえ食べてってよ!」



それだけを言ってもう一回と抱き締められてからジローさんはまたふらふらとしながら去って行った。すると後ろで忍足が、またサボって寝てたんやでとか言う。…ジローさんはどこでも寝れるすごい人だったなあとか考えてれば、隣の景吾がくつくつと笑う。ジローさんと景吾は、私と景吾が出会う前からの幼馴染で。昔もそうだったと楽しそうに言うから、なんだか面白くない。きゅっと繋いでいた手を握ってみれば、私も見てから嬉しそうに景吾は目を細めて、頭を優しく撫でてくれた。それが気持ちよくて目を細めた。





「ほな、これで王宮の部屋配置は以上や。暫くは慣れんやろうけど、まあ氷帝よりはええやろ」
「氷帝ってお前の従兄弟クンが居る?」



謙也に王宮の中を案内してもらって医務室を宛がわれた部屋でコーヒーを飲んでいた。謙也にそう聞けば、頷きが返ってくる。氷帝王国。この立海王国に並ぶ大国であり、国王の跡部クンのプレイスタイルは面白いが無駄が目立つ。そして謙也の従兄弟クン、基忍足侑士が王室付き医師として居るところだった気がする。



「謙也は氷帝ん王宮入ったことあるん?」
「なまえちゃんの迎えや」
「迎え?」


そう聞き返せば、謙也は笑って言った。跡部君となまえちゃん、精市さんは幼馴染やで。相当の過保護や。…ほー。あの跡部クンの幼馴染なんや、なまえさんと幸村クン。…そういや、なまえさんが城下町の学校通えとらんってどういうことなんやろ?普通、王族でも城下町の学校、まあ貴族達や優秀な生徒が通う学習院になるのだろうけど。そこに通う筈や。現に幸村クンや跡部クンはそうして大学まで出ている筈。すると、俺の考えていることを読み取ったのか、



「なまえちゃんは、城下町に降りれんのや」
「は?どういうことやねん」



すると、謙也は寂しそうに笑っただけやった。


111119
あくまでも跡部は兄貴分。過保護なだけ。幸村はシスコン


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