隣を歩くなまえはなんだか嬉しそうじゃった。いや、訂正。るんるん。そんなお伽話とかに出てきそうな可愛らしい効果音が似合いそうな笑顔じゃ。あのあと、HRが終われば、私鞄取ってくるっちゃと言って飛び出して行ったなまえがドアのすぐ前に立っちょった。先に帰っちゃったらいやだもん、と頬を膨らませるからなんだかそれも可愛く見えて。笑ってしもうたと思う。なぜか近くに居た参謀がノートにペンを滑らせていたからにはおそらく。

「なーんか久しぶりじゃね、ほんっとに!」
「なにが?」

そう聞けばなまえはくるりと一回転をしてみせた。ふわりとスカートが靡いた。そしてまた笑顔になって言った。

「こーして帰ることに決まっちょ!」
「…まあ、俺は分からんがええんじゃろうなあ」

そう言ってみせればまた笑顔になるなまえ。本当にるんるん、と言った感じでスキップなんてし始めるから気になって仕方ない。咄嗟になまえの腕を掴み、自分の右側に引っ張った。驚いた様に俺を見るなまえに、らしくもないことをしたと内心後悔をしてから言うた。

「車、来るし、危ないじゃろ」

そう言えば、雅治は変わらんねとまた笑った。正直、俺はなまえを覚えておらんし、小学生の頃の記憶はなぜか曖昧なままじゃ。じゃけど、昔も同じ様なことをした気がした。そうか?とだけ返したが。すると、可愛く頷くなまえに目を細めちょれば、なまえは昔みたいに引っ付いていいかと言い出した。正直、人に、特には女子に。腕とか自分の身体を触られるのは、気に入らないし好きじゃない。テニス部の、いや、俺のファンの奴らが嫌いなのも、それがあったりする。まあ、ファン全員がそうだと思っちょる訳じゃないけど。

とにかく、人に身体を触られたりするのは苦手じゃ。でも、なまえに触られて(こう言うと言い方が変じゃが、)嫌な思いをしたことは無かった。ええよ。そんな返事はすんなりと口に出た。なまえは照れ臭そうに笑って、俺の右手に自分の左手を組ませ、引っ付いてきた。身体がちっこいなまえが寄り掛かってきても、なんの苦にもならんし、割と、懐かしく思いつつ、端から見たら俺達はカプッルじゃな、と思った。それでもいいと思ったのは、らしくないぜよ。
110512

← →
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -