―カチ、カチ、かち。
時計が時間を刻む。数学の授業は楽しい。少し授業のレベルが基礎に偏り気味なのはなしとして。楽しいんじゃ。じゃけど、俺はどの時間の授業も集中できん。元々社会系はやる気が起こらんのじゃけど、音楽じゃって無理じゃけど。じゃ、け、ど!その他の教科より断然楽しいと感じられる数学の授業がたった今進行中なんじゃけど。
「あー腹減った」
「…そうじゃな」
「あ?仁王、元気ねえっと、今は4時限目だったな」
「…そうじゃな」
「ま、頑張れ。あと1分だから。とりあえず頑張れぃ」
そうじゃなとまた返したら丸井にはあ、とため息をあからさまにつかれた。酷い。ていうか、俺は睨まれてないけど数学のせんせに丸井は睨まれとるんじゃけど。まあ、ご愁傷様ぜよ。カチ。秒針が少しずつ12に近くなる。俺はとりあえず携帯と財布だけはブレザーのポケットに捩込んであるからそれだけを確認する。うわ、やばい。腹が痛うなってきた。キリキリと痛むこれはたぶんプレッシャーじゃと思うけど。くそ。テニスの試合でもこれ程のプレッシャーなんぞ感じたことないんに。
―キーンコーン
「お、今日は終わりー。仁王頑張れよ」
数学のせんせはチョークをおきながらそう言った。じゃけど俺はもう返事をする余裕がない。もうすぐ来る。クラスの奴らも苦笑いしてたり呆れたり。色々じゃけど今はそんなもん見てる暇はない。
「ま、あとでな仁王」
「ん、」
小さく丸井にだけそう返事をして俺は今日は前のドアから出た。ちょうど鐘が鳴り終わった。同時にガラッと音が聞こえた。ラッキー!後ろじゃ、と俺はドアから飛び出した。
「まーさーはーるー!」
後ろのドアから教室にそう叫ぶのを聞いた。よかった。今日は逃げれたみたいナリ。ほんとよかった。そのまま敵の陣地でもあるA組に駆け込もうとしたが、A組はまだ授業中じゃった。俺を追ってる敵はA組。…さては、なまえのやつ、サボったんじゃな。
110410
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