「…うう、」
「…大丈夫か?ほれ、そこ座りんしゃい」」



今日はなまえと約束しとった、初デートで。遊園地に来とった。なまえは遊園地好きじゃし、小さい頃から初デートは遊園地がいいと言っとったのを傍で毎回聞いとった身としては、やっぱり初デートは遊園地でなければあかんかった。

今日の朝。と言っても9時半ごろだが。なまえんちに行って。久しぶりになまえの母さんにもみくちゃに抱きしめられ。…少し照れくさくて。そしたらなまえの親父さんが叫びだすから慌てて挨拶はするはで、ちょっとあれだけで疲れた。


それで。約束どおり遊園地に着き。子供の様にはしゃぐなまえに可愛ええなあとか思いながら引っ張られ。なまえは絶叫系は大丈夫の様だった。お化け屋敷も大丈夫だった。これはつまらんなあと思っていれば、にこにこした笑顔で俺にひっついて右腕にしがみついてきたからどきっとしたが。そして。



「コーヒーカップとメリーゴーランドは駄目なんじゃな。覚えた」
「…私も今知った」
「ほれ、お茶買ってきたから飲みんしゃい」



こういう場合はすかっとする炭酸とかがいいのかもしれないが、まずはお茶で気持ち悪さを直した方がええと思い、先ほど自動販売機で買った、小さな缶のお茶を渡す。なまえの左隣に座り、顔を覗き込む。顔が青い。辛そうじゃの。



「…なんで雅治が辛そうなの」
「…なまえが辛そうじゃから」



そういえば、ぐっと押し黙ったなまえは飲んでいた缶を自分の右側に置き、ぎゅっとまた俺の右腕にしがみついた。大好き。小さく聞こえたその声に、くすりと笑ってから俺も大好き、となまえの耳元に返した。耳が真っ赤になっているのに小さな満足感を得た俺は、そのままぽんぽん、と彼女の背中を軽く叩いてやった。


しばらく休んでいれば、なまえはまた元の様に元気になって。最後は観覧車にでも乗るか?と俺が提案すれば小さくなまえは首を振ってみせた。その後満面の笑顔で、最後はあそこがいいと地図になっている掲示板のある一点を指差してみせた。
そこは、この遊園地が売りにもしている、カップル達がそこで愛を誓えばそれは永遠になるという所だった。ご丁寧に地図には大きなハートマークがついている。…まあ、このジンクスは本当だったりする。ここで愛を誓ったカップルは、そのまま結婚するケースが多い。俺の周りだと、実は真田の兄さんとその嫁さんがそこで誓ったらしく。今じゃあ、あの真田も顔に似合った、おじさん呼ばわりだ。俺が頷いて返せば、じゃあ最後まで取っておいて他のを乗ろうと言うからまた俺は笑って返した。







「『愛の誓い。それぞれの誓いを述べた後、アーチの下をくぐってください』、じゃって」


地図でハートマークがついていたそこは、遊園地の奥の森の中にあった。森、というか森林公園みたいな。人目を避けたそこには人があまりおらず、本当に誓いあいたいと思う人ぐらいしか来ないぐらい、アトラクションがあるエリアからは離れていた。



「ここ、でええんかな?立つの」
「ええじゃら。ハートマーク、2つついとるし」
「…なんかはずかし」
「俺のがはずかしいがのぅ」


そう言って俺達は笑いあって。



「じゃあ、俺からの。
…小さい頃から、ずっと好きで。幼馴染として育ち、ずっと隣に居た。お前さんの隣は俺のものだった。こっちに来てからは、まあ、あの事件があったから、お前さんを忘れていたけど、だんだん惹かれていってるのも分かっておったよ。だから、なまえを知っとる昔の俺が憎かった。自分自身に嫉妬しとった、ずっと。ずっと、ずっと好きだったのに、忘れとって思い出せない自分がムカついたし、怒れた。なまえを独り占めしたかった。昔の俺でも、許せなかった。…それぐらい、好きじゃよ、なまえ」


そう言って。俺はなまえに笑いかけた。


「これからも、ずっと俺の隣に居てくんしゃい」


泣いてしまっているなまえは何度も頷いてから俺に抱きついて、好き、と何回も言った。照れくさくて俺はうん、と頷いてから彼女をぎゅっと抱きしめた。小さくて、可愛い。昔から変わらない。



「好きじゃ。ずっと昔から、今も、…これからも。好き」
「…っ私も好き」


俺達はその場でキスをして、そして、笑った。
手をつないでアーチをくぐって後ろを振り返れば光の屈折で雨が上がった訳でもないのに、虹が出来ていて、綺麗だねと二人で笑った。

120221
次で最後かな、と。

← →
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -