むすり、と漫画で言えば効果音が出るみたいな顔をしたなまえは、俺の隣で、正しくは俺の半歩後ろで俺の前を睨み付けている。…なんか屋上での昼再来みたいな感じじゃなあ、と思っていれば、ぎゅうとジャージを握り締めたなまえ。前からは、



「仁王っせんぱーい!」


赤也じゃな。どうやら克服も何も赤也は駄目な様で。…一体何が駄目なんじゃろうか?そう思っていれば、なまえの握り締める力が強くなる。それに苦笑しながらも、駆け寄ってきた赤也に何の用かと尋ねた。すると満面の笑みで、俺がなまえのことを思い出したことを言い、本当によかったっすと言ってみせた。…おそらく。なまえが赤也を苦手としている一番の理由は、この明るさ。…と言いえばいいが、軽さ、と言うのが説明しやすいだろう。軽い雰囲気で話していると認識していれば、警戒をし、苦手としているのだと思う。じゃが。俺に言わせれば、赤也は単純であるし、純粋な奴である。だから、こうして俺がなまえを思い出したことを自分のことのように喜んでいる。


「…私、勘違いしとってたのかもしれん」
「ほな、改めて」
「うん」


頷いてみせたなまえは俺の後ろから出てきて、赤也の前に立つ。笑顔のまま不思議そうに俺達を見た赤也。…ただ、この女子が、なまえ、俺の友人(まだ赤也は俺の彼女とは知らないはずじゃ)でなかったら露骨に顔を歪ませているだろう。赤也は、俺達3年の周りをうろちょろする女子が嫌いだそうで、よく睨みつけたりする。



「切原君、」
「、はい!」
「改めてよろしく」
「はい!こちらこそっス!」



元気に頷いた赤也に薄く笑ったなまえ。…これで気になっとった問題は1つ解決、じゃな。…まだ一番の問題が残っとるけど。なまえの手を握ってぶんぶんと上下に振っている赤也を尻目に周りを見回す。…とりあえず、あいつは居らん様で。それなら真田に怒られるのも嫌じゃし、先に着替えに行くとするかの。赤也にそれを伝えれば、なまえさんはちゃんと俺が見てるから大丈夫ですよとかなんとか言っとったので、任せてジャージに着替え行った。









そして、帰ってこれば、このブリザード。なまえと幸村が笑顔で対峙をしていて、その側で赤也は倒れている。参謀は少し離れた場所でいつも以上のハイスピードでノートにペンを走らせている。…ガリガリここまで聞こえるんじゃけど、大丈夫なのか。そして、おどおどしているジャッカルと豚…じゃなかった。丸井。とりあえず赤也を避難させようとしている様だ。真田に至っては今日に限ってまだ来ていない。そして俺の相方。柳生は真っ青な顔で二人を見ていたが、着替えてきた俺に気が付くと凄い勢いで俺のところまで走ってきた。…どうしたん、一体。



「仁王君!みょうじさんを幸村君から離して下さい!」



……は?
決死の表情で言ってのけた柳生は真面目に言ってるらしく、早く!!といつもの紳士スタイルを下手したら崩壊しかねない。

と、言っても。なまえと幸村は笑顔で対峙しているだけだが、俺が入れる訳がないじゃろ。なまえの対処はまだしも、幸村の世話まで出来ん。



「心配するな、仁王。弦一郎が到着した。精市はこちらでなんとかしよう」



そう言ったのは、いつの間にかこちらに来ていた参謀じゃった。確かに参謀の後ろには現状にただ不思議そうに眺める真田が居る。…はあ、と出そうになった溜め息を飲み込んで、未だに対峙を続ける二人を見た。なまえは相変わらずのオーラ。…実は俺が詐欺師になったのも、元を辿ればなまえに対抗する為。…昔からああいうのは時たま出しては俺が回収に行ったものじゃ。

111110

← →
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -