「そう言えば、思い出してさしあげた様で」
「ん?ああ、丸井かの」
「はい。先程電信文書で」


そう言った柳生にはメールと言う様に一言言って、このままだと幸村にも、赤也にも伝わるのは時間の問題だと考えていた。…なまえの奴、赤也のこと嫌いっちゅーか苦手としとったしのう。なんとかせんとなまえも赤也もいい気分はせんじゃろうし。ちゅーか参謀は?参謀にはもう知られとるってのを前提に対策を考えんといかん。…小学生の頃の話なんてされたらたまったもわじゃない。恥ずかしいレパートリー満載じゃからの。なまえが簡単に言う訳はないと思うが、万が一のこともあるしの。そして、参謀に伝われば幸村に伝わるのは間違いなしじゃ。







「雅治ー。今日部活終わるの待ってるから一緒に帰ろ?」
「ええけど…そんなら見ていきんしゃい」
「…幸村君とかあのもじゃもじゃに会いとうないから、教室かどっかで見てる」
「ほな、メールちょうだい」
「うん」


可愛らしい笑顔で微笑んだ彼女を確認したあと、着信を告げた携帯に嫌気がさした。そして同時に信じられないほどの悪寒を感じた。…幸村か。すると、なまえも感じたのか、難しい顔をして、着信誰、と小さく言った。はあ、とため息をついてから携帯を開き、そして俺はまた、ため息をついた。



「…幸村」
「…出てええよ」
「…ああ」


そして、通話ボタンを押せば元気な声が聞こえる。



【やあ、仁王?】
「そうじゃよ。一体どうしたんじゃ?」
【うーんとねー。みょうじさんと付き合うことになったんだって?】



…どうしてそれを知っている!俺達は今までの態度をほぼ変えておらんし、付き合っていることも公言などしていないし。ちゅーか、思い出したんだって?なら分かるけど、なんで付き合う方が出てくる?まあ、隠しとる訳やないし、バレてもええっちゃ、ええんじゃけど。



「まあ、そうじゃけど」
【ふーん。それでね、お願いがあるんだけど】
「…お願い?」



そして、危険信号を放っている俺の頭に電話越しに幸村特有の、あの有無を言わせない声色での言葉が続いた。



「で?何言われた?」



とりあえず、まずはなまえの機嫌が悪くならない様な説明をせんと。…こいつの機嫌を損ねると中々治らんのが一番の難点で。昔もよく分からんことでへそを曲げられては困った記憶がある。今、思えばあれは可愛い嫉妬、と言ったものだろう。それにくすりと笑ってしまえば、なまえに変な顔をされた。不思議そうに俺の顔を覗き込んでくるなまえに、さてどうするものかと思いながら、笑いかけてから、そっと頭を撫でた。気持ちよさそうに目を細めたなまえは、さしずめ猫の様じゃな。

111016

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