「え、なんかお前たち態度違わね、特に仁王が」


翌朝。俺の朝練があるから早めに家を出て、学校に行きながらなまえは自分の家に寄り、制服を着て鞄を持ちすぐに出てきた。俺は門によそりかかっていて、もう少し女子なんだから支度が遅くても時間的にも大丈夫だしいいんじゃないかとか思いつつも、二人で登校する。その際、以前から不思議だったなまえが何故俺を追い掛け回していたのにファンクラブが手を出さなかったと聞けば、なまえのこっちに来てからの最初の友達、今じゃ親友になっている奴がファンクラブ幹部で、どうも俺を追い掛け回している理由を一から話したら、微笑ましくじれったいから遠くで見守るってことになったらしく。・・・どうも納得し難いが、まあなまえだからじゃなと笑って言えば嬉しそうに笑うから、顔が赤くなるのを感じた。

そして、昼。
朝、コート付近で別れた後はずっとなまえが俺のクラスに遊びにきてなかったからか、丸井が今日はどうしたんだよぃとかずっと煩くて。こっちは寝不足気味だから寝たいと言っているんに。昼になればなまえが走って入ってきて、ガバっと音を立てそうな具合に座っている俺に後ろから抱き着いてきた。そのまま俺の名前を呼ぶから、何じゃーと間延びしながら言えば、冒頭の丸井の質問がやってきた。


「…どうもこうも、俺達幼馴染じゃし?のう、なまえ?」
「うん!」


嬉しそうな声色で頷いたなまえに(まだ俺に後ろから抱きついたままじゃな)丸井はまじかよぃと聞く。なまえが信用出来ないの?と言うからいやそういうんじゃなくてと慌てる丸井を見て俺はくすくすと笑う。そんな俺を怪訝そうに見た丸井。俺に抱きついたまま、なまえも同じようにくすくすと笑っている。


「雅治、」


名前を呼ばれてなまえの方を見れば悪戯っ子の様に笑ってすりよられた。…ったく、昔から甘えん坊さんじゃのうと俺が笑って言えば丸井は呆気に取られた様で、持っていたじゃがりこを落とした。


「え!なに、思い出した訳っ?」
「これ、ちょうだいー」


丸井が身を乗り出して聞いてくる。なまえと言えば丸井が俺の机に置いたじゃがりこの箱に手を伸ばし、じゃがりこを何本か抜き取り、騒ぐ丸井を余所に、はいあーんと俺の口の中に突っ込んだ。


「まあ、そんなとこじゃな」


そう言えば、よかったじゃねーか!と思いっきり笑顔を作って丸井は言った。あんがとさんとだけ言えば、丸井はなまえにじゃがりこで口の中を一杯にされていた。なまえは満面の笑みじゃが、丸井は苦しそうにモガモガと言っている。込み上げてくる笑いを隠そうともせず、俺は言った。


「なまえは昔から悪戯っ子じゃき、気をつけんしゃい」


もう遅えーよ!と言いたいのか、モガモガ口を動かした丸井をくすくす笑いながらなまえはケータイを構えた。響くシャッター音。なまえはにやりと笑ったあと、


「弱みゲットー!」
「それくらいじゃ、弱みになんねーよぃ」
「ええの、この写真、ファンの子に売るだけじゃし」
「ちょ、やめろよぃ」
「リスみたいで可愛いんじゃなか、ブンちゃん」


そう俺が言えば、ブンちゃんって可愛い!とまたはしゃぐから、これも全然変わっとらんなあ、と思ったりした。
111007

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