さて。場面はまた変わり、夕方になった。俺となまえは…と探せば、前の場面より随分成長した俺となまえが居た。ランドセルをしょっていて、左肩にはワッペンが揺れておる、ちゅーことは6年ナリね。二人はどうやら下校中らしく、さっきと同じ川岸の土手を歩いていた。なまえは、随分長くなった髪をポニーテールにして纏めておる。俺はあまり変わらない髪型で、色は黒。笑って話す二人はまだ仲が良さそうじゃが、明らかになまえの方が上。…まあ、小さい頃は蛇の脱げ柄やら蝉の脱げ柄やら。持っては俺に投げ、持っては投げの繰り返しじゃったが。……………そこまで考えて思った。もしや、一番初め、立海でなまえに会った時の恐怖はそういうもんじゃなかろうか。つまりは、なまえは昔から俺より上で、翻弄されとった俺は少なからず弱点を握られ、そして対等な立場を取りながらも、苦手とする場合もあった。みたいな?
すると、前の二人は笑い合って話しておった。そこで分かった。二人の首にはマフラーが巻いてある。手袋もしとるし、上下長袖長ズボン。上にはコートも着とるし、季節は冬。もう少ししたら、卒業式が、くる。


次に場面が変わった。俺の家じゃ。カレンダーが1月。なまえとなまえの両親がうちの家に来ておった。明けましておめでとうございますと挨拶をしとった。姉貴が着物で、なまえも着物じゃった。そのあと、羽つきをして、それは俺の圧勝じゃった。

次の場面は豆まき。赤鬼のお面被った俺の親父に皆で思い切り豆をぶつけた。勿論、なまえの家族も一緒だった。なまえは途中から俺に豆をぶつけてきよって、俺も同じ様に返すから、激戦。最終的にはなまえの母さんと俺の母さんに止められた。

次は学校の場面。雅治君、仁王君、と女子から俺は逃げて居る。これは見覚えがありすぎる。正確にはこの場合は分からないのだが、こうやって女子から逃げることに、じゃ。すると、ばっと出て来よったなまえに俺は抱き着かれ、まーくんはうちんの!となまえは言って俺に綺麗に装飾された箱を渡した。ありがとうと笑顔で言うた俺になまえは嬉しそうに笑った。

次は学校帰り。少し拗ね気味のなまえときまずそうな俺。俺から話かけても、ツンと余所を見てしまうなまえ。俺は、そんななまえに、ん、と一つ包装を出した。きょとんとしたなまえに俺は、恥ずかしそうに姉貴に手伝ってもろたとかお返しじゃとか言って、なまえの手に握らせた。ぱあっと笑みに変わったなまえは、開けていいかと俺に聞いた。勿論と頷く俺に同じ様に頷いてなまえは包装を開けた。ピンクで小さな薔薇がワンポイントの髪留めと、小さなハートのネックレスじゃった。お年玉、半分消えた感謝せえと今度は拗ねた様に俺が言うた。凄く、嬉しそうになまえは笑っていた。

次の場面は、家だった。食卓に座って、家族揃って。俺は、は、とだけ言って箸を落とした。父さんは言った。4月から、神奈川。俺は立海の中等部、姉貴は高等部。敦志は向こうの小学校に。ごめんね、と母さんは言った。父さんもすまないなとだけ言った。姉貴はどうせ1年だからいいと言ったし、あっちゃんはなんなのかたぶん、分かっていなかった。両親二人のごめんねは俺に向いていた。夕食後、俺は、母さんに渡された中等部のパンフを見とった。そこには部活動についてが書いてあって。全国制覇。関東大会13連覇。強豪男子テニス部。間違いなくそれは俺にとって、興味そそられるものであったし、この部活に入れば、自分のテニスは強くなるだろうと胸は躍った。だが、直後に浮かんだのはなまえじゃった。地元の中学に通うつもりだった。なまえと一緒に。だが、立海に通いたいのも、本心じゃった。書類はもう送ってあるらしく、事情を考慮して俺の入学試験は春休み中らしい。



次の場面。卒業式じゃった。桜が綺麗に咲いておった。大半が地元の中学に通う様で、別れを惜しむ必要はさほど、無かった。友達と別れて、俺の元に走り寄ってきたなまえは胸元に俺と同じ花のコサージュをしちょった。俺はまだ、伝えておらんかった。立海に行くこと。神奈川に行くことを。なまえの母さんに頼んだんだ。自分で言いたいと。結局言えんくてこの日まで引っ張ったが。

「雅治、元気なかね。卒業悲しい?」
「…なまえ、」
「ん?」
「黙っとって、ごめん」

そして、俺は言った。立海に行くこと、神奈川に行くこと。そうすれば、知ってると真剣な顔をしてなまえは言った。どうやら、夜。両親が話すのを聞いたらしい。

「…雅治はヘタレじゃし、でも、待ってたよ」
「ごめんな」
「…父さん達も親友でさ、会社一緒じゃろ」
「そうじゃな」

すると、なまえは笑って言った。どうやら、俺の両親となまえの両親はグルらしい。俺の父さんが神奈川に転勤になったのは、父さんの職場のグループが実績を上げて。神奈川の本社がそれを欲しがったから。勿論、なまえの父さんも同じ。だが、なまえの父さんはこちらの支部をしばらく手伝ってから神奈川に行くらしい。約2年ほど遅れて。これもこっそり聞いた話だから両親に俺達が知っていることは内緒。

「私も立海に、通う」
「そしたら、」
「うん」

また、俺達一緒じゃけ。そう二人で笑った。




次の場面。卒業式の次の日じゃった。前の日。俺は、銀髪に染めておった。最初、金髪の予定じゃったけど、途中で変えたのは、さり気なしになまえに聞いた時、銀髪と答えたから、じゃった。じゃが。

「っきゃああ!」
「ぐはっ」

銀髪に染めた俺を、不審者か不良か間違えたのか。後ろから手を取った俺に驚いて。なまえは持っていたバックで思いっきり俺の頭を打った。打ったあとすぐに俺だと気付いたなまえにひどか、と笑った俺じゃったが、場所が悪かった。場所は例の川の土手。頭を思いっきり打たれたせいで少しめまいがしていて。そのまま、俺は土手から落ちた。遠くでなまえの声を聞きながら。







「雅治っ!」
「…なまえ?」
「よかった、おばさん呼んでくる」

次に目を覚ませば、俺はベッドに寝ていて、俺と同い年の、中3のなまえが俺を心配そうに見ていた。名前を呼べば、母さんを呼んでくると立ち上がるから咄嗟に手を掴んだ。雅治?と不思議そうに俺を見たなまえに、言った。

「あの時のバッグは、痛かったナリ」

そう言えば、一気になまえは涙目になった。まさはる、と震える声で言うから。上半身を起き上がらせながら、なん、と返した。もう一度確認する様に、まーくんと言ってくるから。

「なまえ、」
「ま、くん」
「好き」

飛びついてきたなまえをしかっりと抱きとめた。



110814
ヒロインのまーくん呼びが好き


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