「おばさん、私手伝いますよ」
「あら、ほんま?あんがとねー、なまえちゃん」

どうやら。なまえの両親は今日帰るのが遅くなるらしく。食材を買いに出かけに出たところを母さんと会ったらしい。母さんはなまえを一目で分かったらしく、意気投合の立ち話からの夕飯一緒に、と言った感じらしい。





「…酢豚?」
「そうじゃよー、なまえちゃんのリクエストじゃき」
「ありがとう、ございます」
「いいのいいの、なまえちゃんは私の娘みたいなもんじゃし」

にこやかな母さんははい、とご飯を山盛りよそった茶碗を俺に渡してくる。…こんなにいらんし。真正面に座ったなまえは嬉しそうに笑う。それにつられて笑いそうになったが、なまえの隣に座る姉貴がにやにやしとってからに、出来んかった。不思議そうに首を傾げるなまえは確信犯じゃな、と決定つけて、淳志から味噌汁を受け取る。中身は…わかめじゃった。すると、

「…切原、くんが入っとう」
「ぐふっ」

お茶を一口飲もうとした時にぼそっとなまえが言うから吹き出しそうになった。まーくん?と淳志が心配そうに除き込むから、大丈夫じゃよと言うたが、

「なまえ、赤也はなかろうて赤也は」
「…じゃって、あのもじゃもじゃ、わかめなり」
「赤也ってあの赤也くん?ワカメ野郎の?」
「…姉貴、それ本人言うなや。真っ赤に充血するぜよ、目が」
「なにそれこわい」
「なまえちゃんの言う通りじゃし。その子、人間なん?」

…赤也、お前えらい言われようぜよ。俺も同意じゃけど。で、

「…なまえさんは何入れとるん」
「ぱ、パイナップル」
「……そういや、嫌いだったのう」

なまえはさりげなく俺の酢豚の皿に自分の分のパイナップル(酢豚に入っとる奴な)を入れておった。嫌そうにそう言うから、ため息混じりにそう言うた。なまえはパイナップル嫌いじゃったな、昔から。…ん?

「ん?」
「…あれ、私パイナップル嫌いっちゅーこと雅治に言うたっけ?」
「たぶん…言うて、ない」

すると、思い出したっ?と食卓に手をついて立ち上がる。ばんっといい音がした。姉貴はそれにビクったし、淳志はふえとかなんとか言うて。

「何、雅治、昔んこと覚えておらんの?」
「え、あ、おん」
「…あらー。とりあえず、なまえちゃんは座って」

なまえの隣、つまりは淳志の真正面に座る母さんがそう言うて、なまえを座らせる。
…やっぱり、昔を覚えちょらんのは、おかしいじゃろ。幼なじみとして、ずっと一緒だったなら、余計。何より、なんで俺だけが忘れちょるんじゃ。なまえの、幼なじみ、のくせに!なんで、!なんで俺だ、け。忘れっとって。

…ああ。昔のなまえはさぞかし可愛えかったんじゃろうな。…覚えちょったら、他の誰よりもなまえを知っちょって、独り占め、できるんに。


110629
こういう仁王、個人的に好きです

← →
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -