仁王先輩酷いっすよとかなんとか言っちょる赤也は半分無視。後ろであーだこーだやっちょった三強組も心底面白かった、みたいな表情の方と心底疲れた表情の方と分かれてこっちに向かってきた。もちろん、面白い方が幸村と柳、疲れた方が真田じゃ。それをみたなまえはしてやったりと得意げな顔じゃて、俺と目が合うとにこりと微笑んだ。こいつは。本当に面白い女じゃ全く。

「それで、雅治。なんで私は幸村君達に会うん?」
「言ったじゃろ。幸村達が会いとうって」
「おん。じゃからなんで?」

そこまでは知らん。そう言おうとしたら、すっげえと煩い声が聞こえた。赤也じゃ。目をキラキラさせて赤也はなまえの隣に来てがしっと手を握った。…なんかやばいぜよ。背中がぞくぞくしてきよった。

「なまえさん凄いっすね!流石仁王先輩の幼なじみ!おんなじ口調だ!」
「あー…なんで私んこと知っとっと?」
「…?」
「…あ、そうじゃった。知っとっと、っちゅーのは九州…福岡かの。の方言じゃよ。知ってるのって意味なり」
「あ、そーなんすか!」

ならば仁王は福岡出身という訳か?と柳がノートを構えて言うからそれには否定。と言うよりごまかしを。さあどーじゃろーなあ。と言えばむっとした様でならばみょうじに聞くからいいぞと言ったが、まあ、なまえは言わん。前、丸井に聞かれちょったが曖昧に濁しちょったし。すると、

「なまえさんことを知ってんのは噂だからっスよ!あの仁王先輩の幼なじみっすよ?噂にならねえ方がおかしいっすよー」

そう言った赤也にへえありがとじゃーと俺が聞けば笑ってないことが丸分かりな声でお礼を言って、

「…今回の英語のテストの点数言われたくないんじゃったら今すぐ手を離してくれんかの?」
「っ、なななななんで!」
「前、転んでんのを助けてあげた女の子がキミの隣の席の子じゃっただけー」

それだけ言うたと思えば、ねえ雅治、と俺に声をかけてきた。なんじゃと返しながら、つくづく自分の幼なじみなからすごい奴じゃと思った。なんじゃこの騙しとはまた違うのらりくらり。脅しに近いんじゃがまた脅しとは違った印象を持たせる。とりあえず、赤也に手を握られるんは嫌じゃったみたいでよかった。俺だけでええんじゃ、なまえの手を繋いでいいんは。すると幸村があはははと爆笑し始めた。ひとしきり笑い、

「ご、ごめんね、みょうじさん。仁王の幼なじみがこれまたすごいと蓮二から聞いてね。一度会ってみたかったんだ」
「あ、そうなんか。…まあ、みょうじなまえじゃよ!よろしくの」

にこやかに幸村に笑いかけるなまえになんだかモヤモヤとしたものが胸の中で燻る。…正直言うたところ。あんまり幸村と、いやレギュラーと仲良くなって欲しくないのう。なまえは可愛ええし。すぐ、みんな、……は?今、俺は何を考えたんじゃ?自分が考えたことにはたと止まった。いやいや、確かに昨日からなまえに可愛ええとか感じる様にはなったけど、それは事実じゃし。そう首を捻っていれば、

「はい雅治あーん」
「ん、」

いつも通り自分の弁当から俺の好物を出したなまえがそう言ってくるので大人しく口に運んでもらう。カラン、と音がして。音がした方を見れば赤也が箸を落としちょって、驚愕した表情でこっちを見てくる。変な奴じゃ。隣の丸井は、はあとため息をついていつも通り。ジャッカルは、不思議なものを見る様に。柳生は黙って眼鏡を押し上げ、真田は真っ赤。柳はノートに手を伸ばし、幸村はあはとまた笑いそうになっちょる。

「たたたたたたるんどる!」
「…真田君煩い。はい、雅治、あー」
「んー…」

今度は豚肉に人参やら牛蒡やらを巻いたのを口に入れてきた。肉は好きじゃが牛蒡は嫌いなり。そう言えばじゃからこうしてお肉に巻いたんじゃよと笑顔で返してくる。流石。よう分かっちょる。

「ふはは、はは、」
「でー、幸村君はいつまで笑っとんのかの」
「あー…ふふ、あは、ごめんね。この仁王がまさか、ね。」
「…恋人とかがやるんじゃ、」

爆笑の幸村。に、赤也の呟き。ニタリと笑ったなまえは昔からこうじゃよと言った。昔。むかし、のう。なんで俺は昔を覚えちょらんのか。なまえのことなんて、一番、忘れそうに、いや、忘れたってやらんのに。とりあえず赤也がなんかムカついたからタオルを投げ付けておいた。俺の隣でくすくす笑うなまえに頬が緩みそうになって、幸村と柳の前だと言うのを思い出して我慢した。あとで何言われるんか分からんし、な。
110530

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