にこにこ。そんな効果音が似合う風に微笑んでる某部長。ちゅーか、幸村な。その幸村がにこにこと笑って彼女は、ともう疑問符すら付かない口調で言ってきた。相変わらずな幸村っぶりじゃなとか思いつつ、誰か助けてと言いたくなった。丸井の奴は屋上につくとさっさとジャッカルの元に走って行った。赤也はどうしたんスかとか若干冷や汗をかいているであろう丸井に聞く。俺かて冷や汗だらだらだっちゅーのに。

「……隠れちょるよ、そこのドアの向こうに」
「なんで?」

またにこにこと貼付けた笑顔で幸村は言った。まさか本当は連れて来てないんじゃないよねとまた笑う。いやいやいやいや、ちゃんと連れて来たんよ、と慌てて弁解をすれば、ふーんと信じてない声で呟いた幸村。朝練前に幸村に頼まれたなまえを昼、レギュラーで一緒に食べるのに誘うことは、単なる幸村の興味だけじゃと思う。はあ、とため息をついてドアの方になまえ、と小さく名前を呼んだ。返事が無かったためもう一度呼べば、開けっ放しだったドアから顔だけを覗かせた。

「…さな、だくんは?」
「おるよ」
「…じゃあいやだ」
「じゃって幸村」
「真田、そこから飛び降りろ」
「む、無茶を言うな幸村!ここから飛び降りては死んでしまうではないか!」

…いやいやいやいや。幸村の冗談か何か分からんが(多分半分ぐらい本気)、それに真面目に反応する真田はどうなんじゃ、となまえを見るが、変わらずに隠れたままじゃ。ちゅーか、これは、たぶんおそらく…と思いつつも、一体何があったんと言うた。ふう、とため息をすれば、真田が幸村にラリアットをかけられてるのが視界に入る。…幸村は本当にテニス部の部長なんかのぅ。ちなみに最近テニス部は幸村の私物化されちょるのもすごく気になっちょる。

「……みょうじ、何に怒っているのかは分からないが、俺が何かをしたのなら謝る。申し訳なかった」
「…本当?」

顔をまた覗かせたなまえはそう聞いた。ああ、と頷いた真田ににっこりと笑い、うわ、可愛ええ。…真田に見せるの勿体ないのぅ。隠しとうなる。にっこりと笑いかけ、つかつかと真田に近付き、がしっと衿元を掴んだと思うと、がんっと真田の足を踏んだ。やっぱりか。ぐわ、とどこぞの少年漫画の様に言うた真田は痛そう。幸村は俺の隣で目を丸くしちょる。

「な、なにをするのだみょうじ!」
「あのさあ!なんで昨日の朝のHR、せっかく遅刻したん、バレん様に教室に入ったちゅーにあんな風に言うん?」
「む、それは遅刻したのだから仕方ないだろう」
「悪い、私だって悪い!じゃけどさ、あんなデカっい声で言うわけ!めちゃくちゃ恥ずかしかっとぅ。それに!今日の数学!」
「…数学?」
「分からんとこ聞こうとしただけちゅーのに、なんであんたに『私語は許さん!』とか言われんとあかんのっ?」
「な…そ、それは悪いことをした…」

絶対許さん!と言い切ったなまえは真田から離れ俺の腕を持ち、さっさと弁当を食べていた(今のなまえの声で皆固まっちょる)方に引っ張る。そして真田に向かって言うた。

「いいんじゃ、もう。真田の好きな子、バラしちゃるから」

にいっと笑ったなまえに、真田は真っ赤になる。なるほど、脅しは、これなり。なまえは次に幸村を向いて、あどうもこんにちははじめまして、と一息で言うて頭を下げた。幸村はくすくすと笑っちょってたが、よろしくと挨拶をしてから、それ本当と聞いてきた。

「ん?」
「真田に、好きな奴居るって!」

目がキラキラしとる幸村になまえは、また悪戯っ子の様に笑った。すると、知らなかったな、とまたもや同じく悪戯っ子の様に笑った幸村は、ねえ真田と言った。真田は真っ赤じゃけど真っ青。それに離れたところでノート片手に見守っとった柳も加わっちょる。

「…みょうじさん、言ったではないですか。想い人のことで真田君を虐めてはいけません」

弁当を広げちょった輪の中に加わった俺の隣に座ったなまえは真正面に座る柳生にそう言われたが、あの二人お互い両想いなんに気付かんからじれったいんじゃと言ったなまえに真田副部長の好きな奴は誰っスか、と詰め寄った赤也にいらついて一発殴ってやった。おん。すっきりした。

110529

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