※甘くない上にあからさまなハッピーエンドじゃない




さようなら。彼女はそう笑った。いつかまた会いましょう。そう言って踵を返した。その時最後に見た笑顔はとても綺麗で。俺は何も言えなかった。彼女がどこへ行ったのか俺は知らない。どこかで巡り会えたその時に笑顔で。そうとも言った彼女は泣きそうだった。ありがとう。おおきに、おおきに。ずっと俺は言っていた。彼女はそれに返事なんてしなかった。ただ綺麗に優しく。俺が好きだった笑顔で。そっと静かに微笑んだだけだった。

「白石くん、」


泣かないで。そう俺の隣で言ったのは彼女だった。せんせ、と小さく呟いた。なあにと返してくれるから、だから。あの時と同じ様な笑顔で笑うから、だから。その声色があの時と同じだから、だから。おおきに、そう俺は返した。あなたが好きやったんや、せんせ。

「私も、」

好きやったよ白石くんのこと。大好きだった。俺達は好きだったお互いのことが。でもそれは許されない上に俺はこどもで。せんせも自由やなかった。旦那さんとお子さんを愛してはった。あの時、止めなかった俺と去って行ったせんせは、数年後に確かに出会った。彼女は一人やったけど独りやなかった。俺は一人でも独りやなかった。大好きやったせんせにただ愛を伝えることが出来ることに喜んだ。やけど、現実はそうは行かんかった。

「せんせ、愛してるから、やから、」
「うん」
「さよならやね、」

うん。そう綺麗に微笑んだ彼女はまた俺が大好きだった綺麗な笑顔をそのままにし、じゃあねと今度も踵を返した。結婚式には呼んでねと言われたから、再婚上手くいくとええなとだけ返した。にこりと笑うたせんせは俺が知っとるせんせやなくて。せんせの旦那さんとお子さんだけが知りうる顔やった。俺も今度は違う方向に足を向けた。

好き。やけど、俺達は一緒に居られへんかった。未練がある訳やない。ただ、あの時、そう。5年前の中3の時。25歳だったせんせは、すでに旦那さんもお子さんも居った。俺には最愛のこれから俺の奥さんにもなるなまえも居った。でもお互いを愛しておった。大好きやった。あの時、別れた俺達は、現在、また出会った。俺はまだなまえと一緒。せんせは一回離婚していた。せんせは俺が忘れられんで離婚した訳やなかったし、ヨリを戻したのはええことや。でも、俺と再会した時の笑顔は忘れん。いつかまた会いましょう。以前と同じ言葉をまた残していったせんせは、あの時と同じ様な笑顔やった。俺は別に一番せんせを愛したわけやなかった。せんせも同じ。俺の一番がなまえならば、せんせの一番は旦那さんやった。それでも本気で恋をしていた。だから未練も残らない。本気で恋して、終わったんやから。、なまえに会いに行こう。愛してる、と言わせてもらおう。そうすればなまえは照れ臭そうに微笑んで、わたしもよと返してくれるんだろう。

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補足:白石と先生は再会からは付き合ってません。5年前の恋がやっとちゃんと終わった感じ。2人みたいな関係は珍しいですが、白石は別に浮気性な訳じゃないですよ。

イメージ曲:「さよならのかわりに、」(ボカロオリジナル曲)(ver.薬/人)
title by雑音 110408

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