※嫌われ傍観っぽいです。いじめがおこってます
あんまりいい雰囲気じゃないし、夢って感じもしないかも




私は、昔から「みんな」が嫌いだった。一人も嫌いだったけれど、同じぐらい、下手したらそれ以上に「みんな」が嫌いだった。今も、嫌い。大嫌い。だから、「みんな」が居なければ何もできない皆は嫌いだし、「みんな」が気になって動けない私なんかは大嫌い。この世で一番嫌い。「みんな」と居なければ、正解じゃない。そんな世の中も好きじゃない。
最近、私の在籍するクラスで戦争が起こった。戦争、というのは私が勝手に呼んでいるもので、分かりやすく、普通に言えば、はぶせだ。標的はみっちゃん。私と特別仲が良い訳じゃないけど、クラスの女子は誰もが彼女をみっちゃんと呼んだ。みっちゃんは明るくて、気の利くいい女の子だと思う。そんなみっちゃんがはぶせをされたのは、テニス部の丸井君と付き合い始めたからだ。元々、みっちゃんはテニス部のマネージャーをしていて、それだけで一部の全校の女子、そしてクラスの女子からも目をつけられていた。そんな中、テニス部のレギュラーで格好いいって評判の丸井君と付き合っちゃったみっちゃんは、嫌われた。嫌われたって言うか、もう少し身の程を知れって思われた。クラスの女子の中で一番権力を持ってる、とこちゃんに。とこちゃんも、私と特別仲が良い訳じゃない。クラスの女子は全員、とこちゃんのことをとこちゃんって呼ぶから私も呼ぶ。それだけだ。とこちゃんは、丸井君と付き合い始めたみっちゃんをよしとしなかった。元々、みっちゃんが嫌いだった。みっちゃんは気の利くいい子だったけど、それを嫌味として取る子も少なくなかったし、みっちゃんはいつも元気いっぱいで、それをウザイって思ってる子も少なくなかった。とこちゃんもたぶんそう。それで、とこちゃんはみっちゃんをはぶせにするって決めた。私は「みんな」が嫌いだけど、「みんな」に対抗するだけの勇気はない。それに、私の小さい頃からの親友は、違うクラスに居る。私と今このクラスで仲良くしてる子は、私が「みんな」が嫌いなのを知らない。私が居るグループは、私を入れて3人の少ないグループ。私達は、みっちゃんが嫌いって訳じゃない。どっちかって言えば好き。みっちゃんとお弁当を食べることもたまにあった。でも、みっちゃんを庇ってあげれる程力も無い。とこちゃんはちょっと言っただけだった。みっちゃんが、調子に乗ってるって。それで、とこちゃんの次に力を持つやべっちが、とこちゃんのグループと手を組んだ。みっちゃんをはぶせにする。とこちゃんとやべっちの、連合軍だ。でも、みっちゃんは元々八方美人なところもあって、特別仲の良い子をクラスの中に作って居なかったし(他のクラスに居るみたいだった)、だから余計にみっちゃんをはぶせにするのは早かった。今は誰もみっちゃんのことをみっちゃんて呼ばない。みっちゃんは、相田美紀って言う名前だから、相田って呼ぶ。みっちゃんって呼ぶ人は、誰も居ない。私は、みっちゃんがはぶせにされてから一回も喋ってない。元々関わりが無かったし、みっちゃんがはぶられてからは、もっと関わらなくなった。みっちゃんは元々テニス部のレギュラーの一部とか、丸井君とご飯を食べることが多かったから、お弁当も食べることは無い。だから、私はみっちゃんの今の心境を知らない。
他のクラスの親友は、私の小学時代を知ってるから、だからこそ、「みんな」の言う通りにして、みっちゃんには悪いけど、放っておけと、言われた。心配してくれてたんだと思う。私も、そのつもりだった。


「聞いてるのかよぃ」
「う、うん…」
「じゃあ、なんで!」


なんで、美紀の味方をしてやらないんだ!お前友達だろ!そう大きな声で言った丸井君に思わず肩を揺らした。ここは屋上に続く階段の前で、昼休みじゃなくてもいつでも人通りが少ない。今は昼休みで、私は日直でお昼ご飯を食べずで、教室に急いでいた。そんな時に、丸井君に捕まった。話があると引っ張って来られた。ついでに、丸井君の隣には仁王君と柳生君も一緒に居た。そして、ここに着いたと同時に丸井君に言われた。みっちゃんが、クラスではぶられてること。クラス内にはテニス部レギュラーが居ないから、レギュラーの人達は表立って助けてあげられないって聞いたことがある。


「お前、美紀と昼一緒に食べたりしてただろぃ!なんで助けてやんねえんだよ!はぶられてんの分かってるだろぃ」


ごめんなさい、と言いたかった。でも、出来なかった。一気に頭の中で記憶が流れた。小学校の、頃の、あの記憶。ばあっと流れて、それっきりの記憶は、私の言動を奪うには充分すぎるものだった。ごめんなさい、と言おうとした。私が、みっちゃんをはぶせにしているのに荷担しているのは事実だから、言おうとした。出来なかった。ひゅーひゅー、と息だけが抜けて行き、言葉にならなかった。声が、出ない。


「聞いてるのかよ!」
「ひっ…ご、ごめ、っ」


ごめんなさい。
声はそう続かなかった。


「ぐ、」


喉は低い声を出して、それから咳が止まらなくなる。詰め寄ろうとしていた丸井君は思わずその場で立ち止まった。私はと言えば、この症状に覚えがあって、焦り出す。そのまま咳は続く。途中、ひゅーひゅーと音が鳴っているのが分かる。息が出来ない。肩を大きく揺らし、息をしようと試みるけど、全然息は出来ないし、どんどん苦しくなっていく。


「柳生!これ、」
「はい!過呼吸ですね!」


焦った様な仁王君と柳生君の声が聞こえて、息を飲む丸井君の驚いた表情が見えた。仁王君が近寄ってきて。息も出来ない様なこの状態の中、それを把握した私は、誰かが近くに来るという事実にとてつもない拒否感を覚えた。だれも、こないで。わたしに、


「さわ、ごほっ、ら、ない…でっ」
「落ち着きんしゃい、息を吸って、ほら、ゆっくり」
「い、やっ、はっ、ごほっ、はっ、いや、だっ」


それを言ったきりに、私は視界が暗くなっていくのを感じた。




目を覚ました場所は、保健室だった。頭がぼうっとなったまま体を起こした私に声をかけたのは柳生君で、その隣には仁王君と丸井君が居た。それと、仁王君と丸井君と同じクラスの私の親友だった。よかったと私に近寄った親友に心配をかけたことを申し訳なく感じて、そして私はなぜ3人が居るのかを聞いた。すると、あの時過呼吸になった私はそのまま意識を失くし、そんな私を仁王君が保健室まで運んだとのことだった。慌てて仁王君に謝れば、くすりと笑って詐欺師との異名を持つ人とは思えない程優しい声で気にすることなかよと独特の響きがする言い回しで言ってくれた。丸井君からも悪かったと言われ、そしてだけれど出来れば美紀と仲良くやってほしいと言われた。少し申し訳なさそうに柳生君は微笑んでいた。あれほど、怒っていた丸井君とそれを見ていた―要するに黙認していた2人の代わり映えに私は頷くことしか出来なくて。それでも気になって親友に帰り道(部活があると言うのに、特別に休んでくれて家まで送ってくれた)に聞けば、苦虫を噛み潰した顔をして、なまえには悪いけど昔のことを少し話したのと言った。どくん、と変な風に動悸がした気がしたが、あの状況と私の症状から言って、過去を話さないままに説明は難しい。それに、そんなに深くまで言ってはいないだろう。
私が、小学校の頃、いじめられていた。
そうしか言ってないでしょう。



そして、今日。朝起きて、朝練があるからと近くに住んでいる親友は学校にすでに登校していて、いつも通り学校へは一人で行く。そして、下駄箱で上靴と履き替えようとした時。どん、と後ろから誰かにぶつかった。ごめんなさいと咄嗟に言えば、睨んでからその人は去ってしまった。確か、あの子は、去年のクラスで一番力があった、えりちゃんだ。…機嫌が悪かったんだろうか、あんな風に人を簡単に睨む様な人じゃないのに、と思いつつ下駄箱を開いた。

「っ…!!」

私は驚いて、動悸が早くなるのを感じた。中には上靴と、上靴の上にある一枚の手紙。昔の光景とかぶる。そしてすぐにここが下駄箱で大勢の人が居ることを思い出した。誰にも見られてはいけない。咄嗟に感じた私はその手紙を掴み、上靴を慌てて履いて、自分の教室まで走る。途中でトイレの個室に入った。息が荒いままにその手紙の封を開けて中にある一枚の便箋を震える手で開いた。


【こうもりなやつは、ゆるさない】


全て平仮名で書かれたそれに血の気がさあっと引いていった。どういうこと、どうして。なんで、こうもりって。どういうこと。そして、はっとした。

昨日、私は、みっちゃんの彼氏の丸井君と、屋上前の踊り場で話した。そこには柳生君と仁王君も居て、過呼吸で倒れた私を仁王君が保健室へと運んでくれた。そして、私が目を覚ますまで、親友と3人は待っていてくれた。

テニス部レギュラーの、3人が。


どうしよう。なんで、忘れてたんだろう。みんなと同じ行動をしなくちゃだめだった。なんで。どうすれば。分かっていたのに。彼らに近付くことはなんともないとしても、恋人って関係になったら終わってしまう。ましてや、マネージャーをしていたみっちゃん。みっちゃんがああいう状態になっている時、変にレギュラーと接してはいけない。分かっていた。でも、私なんかがレギュラーの人と話す機会なんてそうそうないから。そう。

私は、今、全校の女子を敵に回しているみっちゃんの味方をしたと、思われてしまったのだ。



「だからー、やめなって言ったの」


びくりと声が聞こえた。トイレに誰かが入ってきた。誰かと話しながら。今の現状にいっぱいいっぱいで何も考えてなかった。ここがトイレの個室ってことも忘れていた。

「あの子昔からそうだったじゃん」

とりあえずはクラスに向かえばいい。だけど、今この会話をしている中には出ていけない。なんだか嫌な空気がする会話だ。

「ずっとみんなの言いなりだったじゃん」
「そうそう。一度も悪口言わないで笑ってるだけだしさー」
「本当、」

そこで声は途切れた。
がんっ。

「あんたみたいなやつはこうもりって言うんだよ、みょうじなまえ!」

私が入っている個室のドアが蹴られ、トイレの中に音が響いた。



121103
ちょっとリアルな感じに書いてみたくて。名前変換が活用できてません
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