夜。こっそり私は部屋と忍び込んだ。明かりを消して、部屋の主はベッドの中で夢を見ているはず。私はそっと大きなドアを音が立たないように閉めた。無駄に広い部屋だから、私が居るドアの前からは部屋の主が寝ているベッドは見えない。スリッパの音が鳴ったら嫌だからドアの前で脱ぐ。そのまま私はなるべく音を立てない様に部屋の主が寝ているだろうベッドに近付いていく。両手で少し大きめの包みを持っているから、転んだら包みも今の行動も、全部おじゃん。だから、絶対に転べない。部屋の主が起きない様に慎重に進む。でも、この部屋はふわふわのカーペットが敷かれていて、足の裏がふわふわで気持ちいい。さすがだなと思いつつ、ベッドの中が見える位置まで進んだ。部屋の主はそこですやすやと寝ているらしい。暗いからもっと近くに行かなくちゃ見えない。それにしても、とベッドに近付き、ベッドサイドに立って思った。ミカエルさん、なんであんなに笑顔だったんだろう?そりゃあ、最初は「お坊っちゃまへのサプライズのお手伝いが出来るだなんて」と喜んでくれてはいたけど、あの最後の「気を付けて行ってらっしゃい」って言いながら浮かべていた、あのミカエルさんのすごくいい笑顔はなんなの?そう思ってみても、今は分からないから、早く目的を果たして寝よう。どうせ明日は学校で忙しいんだから。そう、私は持っていた包みをベッドサイドの小さなテーブルに置いた。部屋の主は寝ているみたいで、私は彼の頭に手を置いて、


「ハッピーバースデー、景吾。ちょっと早いけど、プレゼントね」


そう言った。そう、今日は景吾の誕生日の一日前。夜の12時ちょっと前ってところ。この時間、景吾はいつもなら起きてるんだけど、毎年、誕生日の前日だけは早く寝る。景吾が言うところのメス猫、要するに景吾のファンの人達が明日は景吾を追い回したり、どっかに詰め込んだりして、何かしらプレゼントを渡してくる。そのおかげで部活は出来なくて、郵送されてくるプレゼントをレギュラーの皆とマネージャー(兼景吾の彼女)である私で手伝って仕分けをしたりと。みんなどっと疲れる日でもあるし、当の本人である景吾が一番疲れてる。でも、こう見えて景吾は優しいからメス猫さん達を邪険に扱うことはできないし。まあ、度合いが酷すぎると怒るけど。イギリスで育ったこともあってなのか、妙に紳士なところも持つ。まあ、そこも好きなんだけど。そして、私はそんな景吾を起こして、祝う訳にもいかず。でも一番におめでとうって伝えたかったから、こうしてサプライズと称してクリスマスのプレゼントみたいに置きに来たのだ。


「じゃあ、おやすみ。また朝ね」
「…キスの一つでもくれよな、あーん?」


そう声が聞こえたと思ったら、腕を捕まれた。えっ?な、なに?何が起こったのか分かっていない私を景吾はベッドの中へと引きずり込んだ。そして、私の上に馬乗り。ぱちぱち、と何回か瞬きをしても、そこにはシルクのパジャマを着た、さっきまで寝ていたはずの景吾が私の顔を覗き込んでいるのだ。…え、ちょっと…どういうこと?


「なあ、なまえ。日付、超えたぜ?」


そう口角を上げて景吾は言った。耳元で囁くから、変に腰に響くし、ぞくり、と身体に何かが走る。それでも、私はそのまま景吾を見上げて言った。


「お誕生日、おめでとう」


そのまま私にしては珍しく、私からキスを仕掛ければ、そのまま景吾も答えてくれた。首筋に口を添える景吾に、もう一度おめでとうと小さく囁いた。



121003
ミカエルさんは跡部に「何か素敵なものをご用意いたしますから狸寝入りをお願いします」と言っていて跡部は狸寝入りしてた。ちなみに年は中3なので、この後は普通に寝ました。大人の階段(おい)はまだ登ってません。
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