幸村、彼女ともに注意




賭けてもいい、君は振り返るわよ。いつもと同じ口調で彼女は言った。そんなこと賭けてもないよ。俺は笑って返した。だけど彼女の笑顔はキレイなまま変わらない。くそ、なんなんだこいつ。少しは顔色変えればいいのに。無償にむしゃくしゃした。自分がなぜこの女を好きだったかも分からなくなった。なんなんだ本当に。

「精市君、」

彼女はそう言ってまた嬉しそうにふわりと笑った。なんだかムカつく。なんだこいつ。俺はお前に別れを切り出したんだ。なのになんで笑ってられる。…ああ、そうか。

「なんだい、なまえ」
「なぜ急に、」
「別れを切り出したか、だろう?」

くすりと笑って言えば彼女は今までの笑顔をほんの少し崩した。眉間に軽くシワを寄せ、口元は軽く歪んでいる。あ、不機嫌だ。すると、彼女は腕組みをして、足を軽く開いた。仁王立ちだ。

「私のこと、もう君は嫌いなの?精市君」

そう言った彼女にふわりと微笑んだ。うん大っ嫌いだよ。そう言ってやった。すると彼女は眉間のシワを深くし、だが目には軽く水の膜が出来たみたいだ。なん、で。泣きそうな声で彼女は言った。なんで?今なんでって言ったのかい君は。

「なんで?それは君が分かってるんだろ、よく。そうだろ?だって君はおかしいじゃないか。ていうか人を上から見下した様なその態度がまず気に食わないんだよ。いい加減にしろよ。自分だけが偉いとでも思ってんのか。それにお前、今自分のことを嫌いになったのかって言ったよな。じゃあ自分はどうなんだよ。お前、最初から俺のこと好きなのかよ。さも当たり前な様に俺の隣に居て。いい加減にしろよ。何様のつもりだ。好きだったら好きって態度で見せろよ馬鹿じゃないの?まあそんなお前を好きになった俺も俺だけど。だけど、もう無理。お前なんかに付き合ってられない。別れろ、俺と。いつも人を上から見てたお返しだ。拒否は認めない。じゃあな、なまえ」

そう言えば彼女はもう泣いていた。俺はその涙にただならぬ興奮を覚えた。彼女は泣きながら、ごめんねと言った。何が今更。そして、精市君泣かないでと言った。何言ってんだこいつ。すると彼女は俺の頬に手を添えた。ゆっくり何かを拭う様に親指の腹を滑らせた。俺はその手を掴んだ。ぎゅと強く。するとびくりと肩を揺らした彼女の頬に舌を這わせた。涙を舌で拾う。しょっぱい。彼女の目を見るとそこには俺しか写っていなかった。それに満足したのか、俺は不意に笑って彼女の唇に噛み付いた。情熱的なキスをした。頬を少し赤くした彼女が好きと小さく言うのをどこかで聞いた。





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年初めがこんなんで申し訳ない。オチなし。幸村君ごめん。でも楽しかった。

一応お題「賭けてもいい、君は振り返る」
title by にやり
110130

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