※高校生2年設定



跡部、と声をかけようと思い跡部を見れば、声をかける気持ちが失せてしまった。…なにあの怖い顔。まあ仕方ないんだろうな、と彼の机を見た。机の上には綺麗にラッピングをしてある包みが山になっている。はあ、とため息をついた彼はパチン、と指を鳴らした。…ご丁寧に腕を上に持ち上げていつもの試合みたいだ。すると、うす、とスタンバイしていたかの様に樺地君が現れた。きゃあきゃあ言ってる周りの女子すごいうるさい。樺地君はポケットから紙袋を取り出し、彼の机の上の包みを全てそれに入れてから彼に一回礼をしてから教室を出て行った。今日は確か朝練があったはずだから、靴箱、廊下、そして教室の机。跡部は鞄を机に置こうとして、はたと思いついたかの様に机の中を見た。また、ため息をついた彼にそこの状況は把握出来る。彼がそこから取り出したのは先程一緒の綺麗にラッピングされてある包みだ。彼はそのまま自分のロッカーに向かった。そしてまたため息。そこにはまた包みが、もう溢れんばかりにぎゅうぎゅう詰めになっていたのだ。…あんなにすごいな、と思っていれば彼は携帯を取り出して何かを相手に伝えた。しばらくすると、黒服の男の人−名前を知ってるけど。確か安達さん。跡部の運転手の一人で最近彼女さんが出来たと言ってた−が来て、跡部の手にあった包みを受け取り、ポケットから出した紙袋にそれを順番に入れていった。あっという間に紙袋は5つになり、安達さんは跡部に頭を下げてから、足早に教室を出ていった。


今日は10月04日。
跡部景吾の誕生日だ。
氷帝学園の王である彼の誕生日を祝わない氷帝生はまずいない。生徒の大半が彼の為に誕生日プレゼントを用意する。彼のファンクラブである女子を始め、彼を慕う男子からもプレゼントは届く。それは、氷帝生だけではない。他校からも届く山の様なプレゼント達。直接受け取ったものは家の者に。他校からのプレゼントは氷帝学園跡部宛に届く為に部室に届いてしまう。恨みも人望や人気とともに手に入れてしまう彼のプレゼントには、たまに危険物が混じっている。だから、今日のテニス部の活動はその山−いや、滝の流れる様になるプレゼント達の振り分けだ。元々は、宍戸、ジロー、私の跡部の幼馴染み組かやっていたのだが、いつの間にかレギュラー全員でやることになっていた。

そして、跡部はクラスに居る方がかえって迷惑になるため、今日だけ自主休講という形を取り、生徒会室で生徒会の仕事をこなす。まあ、教師の方々も認めてるから、実際は欠席扱いにはならない訳である。







「景吾ー?紅茶入れたよ」
「あーん?…休憩にするか」

そして、私は書記兼跡部の幼馴染兼氷帝男子テニス部臨時マネージャー兼跡部の彼女という立場を利用して、今日一日は跡部と一緒に自主休講をし、生徒会の仕事を手伝っている。2、3時間書類整理をしていた跡部にいつも飲む紅茶を選んで煎れて。持って行けば、かけていた眼鏡を外して軽く伸びをした。

「はい」
「ああ」

跡部がカップを受け取ったのを確認してから私も近くから椅子を引っ張ってきて、彼の隣に腰掛ける。一口飲んでから、ふっと小さく笑った跡部を見て、今日の紅茶もちゃんと煎れれたのだと思った。一口私も飲めば、跡部の執事さん-ミカエルさんだ。小さい頃から私もお世話になってる-が煎れるのには到底及ばないけど、中々の味かなと少し自画自賛。

「なあ、」
「ん?なあに、景吾」

景吾は私に声をかけてから、カップを机に置いた。私も置き、景吾の方へ身体を向ける。優雅に笑って彼は言った。

「俺に、渡すものあるだろ」

…全く。この人は俺様だが、本当に鋭い。確かにあるよと素直に頷けば、満足そうに笑ってから早く寄越せと言った。全く。あんなにたくさん貰っておきながら、と思ったがそれをちょうど1年前の今日言ったら、この人は照れもせずにさも当たり前の如く。お前のだからじゃねえか、とかなんとか言ったのを思い出して、私が熱くなりそうだ。

「…はい」

鞄の中から金色の小さな包みを出してきて、跡部に渡した。ありがとよ、と言って彼は微笑む。その笑顔がまたなんとも言えないくらい、そして長年の付き合いである私にしか見せないと知っているから、もう仕方が無いと思ってしまうぐらいに胸がときめく。また彼の隣に座り、彼の反応を待つ。

「…なまえ、」
「…なに?」
「嬉しいことしてくれるじゃねーの」

と、彼は包みから出したものを指にひっかけて笑った。だが、と言って私を引き寄せる。

「こういうのは俺が用意するまんだろ、あん?」
「…意外性があっていいでしょう?」

それに、と続けて言えば彼は目を丸くして、当たり前だろと私に口付けた。



111004
(跡部お誕生日おめでとう!)(女の子は、それにのあと「ペアリングはもう少ししたらあなた景吾がくれるんでしょう?」と言っています)
(女の子が跡部にあげたのはペアのネックレスです)(※ただしイニシャル入りの一点もの)(つまり女の子も結構なお金持ちかな?)
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