なんて、渡せばいいんだろう。今日は6月4日。私は制服に着替えたまま自分の部屋で頭を悩ます。机の上には通学用鞄とお弁当袋。去年妹が私の誕生日にくれた可愛いキャラ物のお弁当袋だ。鞄にはいくつかキーホルダーがついていて、その中の一つ。趣味を少し疑うのはどこに行けば買えるのか、というかどこに行けば売ってるのか分からない変な顔したこけしみたいの。--去年の私の誕生日に仁王がふざけてくれた奴だ。そのところまではいつもと同じ。ただ一つ違うのが、その2つの隣で淡く存在を主張するショプバ。小さめのそれには、また紙袋が入っている。色は白。プレゼント用に包んでもらったもの。

「…あ、今日、日直じゃん」

悩んで悩んで。そしたら最悪なことを思い出した。まあ、彼は部活の朝練で朝一緒になることなんて滅多にないから、朝はゆっくり悩もうだなんて思っていたからなのか。案の定大事な日直ということを忘れていた。すぐに鞄を掴み走って学校に行った。でも、結局は日誌を取りに行くのが間に合わなず。先生に日誌で軽く、頭を叩かれた。


「……………………は」
「沈黙がキモい」
「あんたの髪の色がな」
「なっ、旨そうな色だろぃ!」

あんたの頭は美味しいか美味しくないかでしか判断できないのか。と言いそうになったのは飲み込んだ。以前彼に言われたんだった。思ったことをそのまま口にするなって。

「ぶんちゃんキモいなり」
「ぶ、…仁王ナイス」
「な、仁王の馬鹿!」

チュッパチャップスの包み紙を外している丸井に仁王はそう言った。うん。同感。ていうかさっきの飴ちゃんどうしたの?もう食べちゃったの?どうせかみ砕いたんだろうけど。すると仁王がつんつん、と私の肩を突く。ちなみに仁王は私の隣。丸井が仁王の前の席だ。先生とこのクラスにいるファンクラブの女子の方々が他の女子だと煩かったりファンだと、ファン同士でいざこざが起こると言って、彼の幼なじみである私がこの2人一緒に固定だ。親友のりさちゃんは裏切った。

「なによ、仁王」
「はよ参謀に渡さんでええんか?」
「いいの。どうせ帰りまで忙しいし。他の子で。後で渡すから」
「ていうかお前何あげんの?食い物?菓子?」
「馬鹿じゃないの?あんたじゃあるまいし」
「ちなみにぶんちゃんの参謀へのプレゼントは飴ちゃんじゃった」
「そういう仁王は?」
「俺は柳生と割り勘でグリップテープとかの消耗品」

へえ。と私が言えば、いいからお前何あげんだよ!と煩く吠える丸井に嫌気がさして紙袋を鞄から出そうとして、はたと止まった。え。ちょっと待って。机の両方のフックには鞄とお弁当袋。のみ。さあっと血が引いた気がする。え。まさ、か。まさかまさ、か、!





「…成る程。それで俺に土下座をしている訳か」
「そうです」

どうやら私は急いでいるあまり。いつも持って行く物は癖で持っていき。ショプバは置いてきてしまった様だった。そうかそうか。と呟いた蓮二は薄く目を見開き。昨日貞治に会ったがちゃんと貰ったぞ。と言われた。

「も、…申し訳ないです」
「同じ幼なじみでもここまで違うのか」

そう言った蓮二は怒ってる。幼なじみの勘だ。まあ、沸点がそれほど高くない蓮二がこう怒ってくるのは、私が期待をさせすぎたのだ。1ヶ月前からアプローチをかけ。念入りにチェック。そして蓮二の好みは幼なじみの役得というか。迷わずに選べたと蓮二に言ってしまったのだ。

「………そうだな。俺にはどうしても欲しいものがある。それをくれるなら許してやってもいい」
「ほ、本当っ?」

ぱっと顔を上げたら、ちゅ、と軽い音が聞こえた。え?目の前には満足する様に笑う蓮二。すごく近い。そして蓮二は私の唇に親指を這わす。まだ現状が理解出来ずに私は呆然とするだけ。

「…なまえ?」
「う、おおえぃ!」
「なんだそれは」
「分からない」

そう言って少し黙る私。蓮二は相変わらずの距離だ。どういうこと?と私が聞く声が短い沈黙を破った。

「どういうこともなにも」

フッと笑った蓮二は、好きなものは必ず手に入れたがるからな俺は、と言った。え、私、自惚れても、いいの?

「つまりは好きってことだ、なまえ」

赤く色付いてるはずの私の頬。やばい。熱が上ってきた感じ。すごく暑い。ていうか、これはプレゼントになるのか、とか考えつつ。繋がれた手にまた真っ赤になって、蓮二に笑われた。恥ずかしい。

結局。家に忘れたプレゼントは後日渡すけど。とりあえずは目の前の好きな人に、私もと伝えることを先にしなくちゃいけない。

「わた、しも好き!お誕生日、おめでとう!」
「ありがとう、だな」

にっこり笑った蓮二はとても嬉しそうだった。


110604
とりあえず意味分からんくてすまぬ。柳さんお誕生日おめでとう。ギリギリだな、うん。

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