蒼の国の友人
俺の父は、俺と同じ色の瞳に、それがもう少し暗くなった色の髪を持っていた。母は、綺麗な金色の髪に茶色の瞳を持っていた。暫くは家族三人で暮らしていたが、ある時を境に俺は母に連れられ、母の兄上の一家と暮らす様になった。父はたまに会うことはあったが、それも10年前を境になくなった。10年前、父は亡くなったのだ。


俺は、全てを知っている。
母と父が何者だったのか。俺が何者なのか。…なまえの、父上、母上のこと。謙也のこと。そして、なまえのことを。全て、なまえが知らされていない全てを知っている。時が、来るまでは、なまえには知らせないと元さんが判断した。俺と謙也はそれに従うのみだから。




「よお、滝」
「…景吾、ここでは萩って呼んでって言ったじゃないか」



ここは蒼の国じゃないんだよ、と言ったのは、滝萩ノ介。帽子を目深く被っているから周りからは分からないが、こいつの髪色は藍色。目も同じ色をしていて、出身は蒼の王国である。こいつとは昔から色々とあるから、仲が良い方だ。滝はたまに国境を越えて黄の国に来る。無許可で国境を越えてくる、つまり、不法入国だ。まあ、黄の国と蒼の王国が以前より交流が無くなったから出来る芸ではあるが。
蒼の国は、この黄の国と違って、一般市民にも名字がある。王制である蒼の国は、王室だけが使える名字があり、その名字の者は必ず王室の血縁者だ。
滝と待ち合わせしていたカフェは静かな店で、店の中俺達は外に飛び出した部分の席に座っている。


「なんか飲むか?奢るぜ」
「…ありがとう。…今日なんだろ、なまえさんの試験日」
「…ああ」


俺がそう頷けば、滝は無事に終わります様に、と手を組んだ。こいつは蒼の王国で聖職者の立場に立っている。だから、祈る神は、黄の国の神ではなく、蒼の王国の一番偉いとされる太陽神だ。


「それで?なにかあったか?」
「なにも。いつも通りだよ」
「…いつも通りって言うのが気に食わねえがな」
「うん。王様も、やっと安定した感じ」
「…そうか」


蒼の王国の王は、今の黄の国の王が代わる時、つまり兄王から弟王になったのと同時期に新しい王に代わった。前王は温厚で国民思いと有名だったが、それまでの王とは違い、今回王になった奴は同じ王族とは思えない傍若無人だ。


「俺は、昔の王様の方が、好きだったけど」
「…不敬罪で罰せられるぞ」
「ここは黄の国だし」


そう笑って言った滝は、だからいつでも蒼の国においでと笑った。それに俺は何も返さずに笑って答えた。





「…大丈夫っすか?なまえさん」
「なにが?」
「なにって…視線?」
「ああ、慣れてる慣れてる」


そう心配してくれた光にありがとうとお礼を言った。もう私達は会場に着いていて、私はさっきまで被っていた帽子も、サングラスも取っていた。だからか、視線が集まる。たぶん、皆私の髪色しか見てないんだろうけど。


「…そう言えば、光と蓮二はどこに住んでるの?」
「…俺ん実家は中央区すわ。今は蓮二さん家に居候中」
「俺も実家は中央区だが、今はB地区に住んでるぞ」
「へえ。…私は、イーストシティ」


そう言えば分かっていた様に二人はそうか、とだけ頷いた。
この国で、異端の色を持つ人達は、イーストシティに住むしかない。


「でも、父さんも兄さんも医者なんだよ」
「それはすごいっすわ」
「ではなぜイーストシティに?」


イーストシティの、病院にかかれない人達を救いたいんだって、と言えば、素晴らしいなと蓮二は答えた。


「ぜひ会ってみたいな。今度伺ってもいいか?」
「俺もぜひ会いたいっすわ」
「え?あ、じゃあ、今日帰りに来る?」



私の提案に蓮二は頷き、光は実家に帰らないといけないから今度行くと答えた。
120802
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