はじまりと友人

中央区に出る際、パスを持っていない私は景吾についてきてもらうことになった。
この国では、中央区やB地区、イーストシティの境は勿論、イーストシティの第1区、2区、3区、4区、5区の境もあり、そこを通過するにはパスと呼ばれる通行手形が必要となる。私一人で、今住んでいるイーストシティの第4区から出る必要性が、今まで皆無だった為私はパスを持っていなかった。そもそもパスを発行するには一週間かかるし、更新は半年ごと。それ以上に戸籍と照らし合わせたり、定職が必要だったり、随分な費用がかかったりする。だから、イーストシティでは偽パスも流通している。パスにはその人の顔写真や名前を記入しない。生年月日だけ記入される。パスの中には小さなチップが埋められていて、それに機械が反応するから、その機械を誤魔化すチップさえ作ってしまえばいいのだ。ただ、パスの右上には「医師」「聖職者」「教師」「軍関係者」の職に就く人にはそれぞれのマークがつく仕組みになっている。その場合、それを機械に通さなくてもゲートに居る門番に見せるだけでよしとされる。それが優遇される職業のメリットの一つだ。
一般的には優遇される職業のマークは知られていない。よってその偽装は出来ない。でも、普通のパスは偽装が頻繁にあるので、たまに生年月日と照らし合わせて戸籍を調べることもある。それによって何日も足止めを食らったりもする。一般のパスは。

そして、優遇される職業のパスはこの検閲無し以外にもメリットがある。
4人までなら、パスを所持していなくても通れるのだ。また、「医師」は「医師」のパスを発行し、「聖職者」には「聖職者」のパスを発行するのが決まり。よって、景吾は3つのパスを持つことになり、これを併用すれば景吾以外に一気に12人通れるという訳だ。
まあ、今回は私だけだから、景吾と私で2人のみだけれど。




「ほら、今日の午後なんだろ?」
「うん。そう」



実は手紙はもう一枚入っていて、それには地図と時間が記されていた。
中央区の第3区の大学病院の第3棟。
そこで医師の免許試験の2次試験が行われる。
私はそれに間に合う様に景吾に連れて行ってもらうことになったのだ。そして、無事にイーストシティのゲートを抜けた私達は中央区直行の列車に乗っていた。私は白いローブを着ている。中は白のYシャツに黒のちゃんとしたパンツだ。隣に座る景吾は同じ白いローブは傍らに畳んでおいて、黒のジャケット姿だ。ただ、私達は二人ともサングラスをかけている。髪色は私は父さん譲りの金髪で、金の色はあまり居ないから逆に珍しがられたりするし、景吾は茶が混ざった金髪だからまだ大丈夫だけど。今まで気にしてきた様に、目の色は異端の色。中央区に近づくにつれ、この国は異端の色は少なくなる。異端の色は差別され、ほとんどがイーストシティで生きる。だから、中央区の人はたまに異端の色は単なるそれこそお伽話の一つだと信じている人も居る。

景吾はそう言って父さんが用意してくれたサンドイッチを私に渡した。ありがとうと言いながら私はそれを受け取り、頷いた。景吾には私の荷物に入れていた水を渡した。



「…それにしも、今日は人が多いな」
「…そうね。サングラス、目立つからあんまり増えて欲しくないね」



列車の中でもサングラスをしている人はあまり居ないから、混んでいる(と言っても向い合う様に4人座れる座席が全て埋まっているだけ。私達みたいに2人で座っている人も居るし)列車の中では目立ってしまう。



「そう言えば、景吾の時の2次はどんな感じだったの?」
「…毎年、2次は面接だ」


そう言って景吾は嫌そうな顔を作った。サングラスで目は隠れているけど、多分、あの凍る様な目をしているんだと思う。と言うことは、景吾にとって、嫌な思い出、なんだ。そう思っていれば、見透かした様に景吾は言った。


「…異端の色は風当たりが激しい。受験者が一人で部屋に入り、審査員が6人程度並んだ前に座らされる」
「そう…」


やっぱり、異端の色はこういうところで差別される。
でも、景吾はこうして、医師にも教師にも、そして差別を許されない職業だけど一番異端の色への風当たりが厳しい聖職者にもなれている。景吾が優秀なのもあるけど、大丈夫。私も受かる。





そうして、列車が中央区へと到着する。駅から一歩出れば、やはりイーストシティでは見られない都会だ。車は高級車が多いし、建物も立派だ。こんなに道は綺麗なんだ。初めての中央区に目を輝かせる私に景吾は声をかけた。




「なまえ。帰りに買い物してこいって元さんが言ってたから、帰りに買い物してくぞ」
「あ、うん」
「それと、駅で待ち合わせしてるんだろう?」



あ、そうだった!と私は声を上げた。
医師の1次試験はイーストシティでは行われず、その時は謙也兄さんに連れて行ってもらたんだけど、その時に出会った同じ受験生と約束したんだ。
1次に受かったら、2次試験は一緒に行こうって。中央区の中央駅(セントラル駅)の前で午前10時に待ち合わせしようって。私は駅の前に出ているし、父さんから借りた懐中時計は5分前をさしていた。すると、




「なまえ」




名前を呼んだその声に聞き覚えがあった。そちらに振り向けば、長身の茶髪に私より少し高いぐらいの身長の黒髪。声を発したのは長身の茶髪の方で、私は彼らの名前を呼んで近寄った。




「蓮二、光!」
「お久しぶりっすわ」
「元気そうで安心した」




120621
やっとテニキャラ新しい人達出せた
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