君は誰 | ナノ

君に会いたい


「ね、ねえ、沙良ちゃん、財前君と帰るんなら、私先に帰る?」
「あ、待って待ってや!な?もう少し待っとって?」



暫く練習を見とったんやけど、やっぱり沙良ちゃんは財前君と帰るんやろうなあ、と思い、聞けば慌てた様に沙良ちゃんは言うて、私は思わず頷いた。ほっとため息をついた沙良ちゃんの隣でコートを見れば、財前君と忍足先輩がラブルスで有名な金色先輩と一氏先輩と打ち合っておった。…金髪が目立っとって、忍足先輩めっちゃ格好ええ。
最初見かけた時は金髪にしとるから怖い人なんかなあとか思ったんやけど、全然そういう感じやないらしくて。私が先輩と直接話したんなんて、ずっと前にボールを渡した時と、この前化粧しとった時にぶつかって、プリント拾ってくれて。…すごく、優しかった。
あの時、化粧しとったのは、もうすぐ来る文化祭でのコンテストにオサムちゃんが出ろ言うから。あ、オサムちゃんは、私達のクラスの担任で、テニス部の顧問の先生。コンテスト言うんは、勿論のことミス四天宝寺コンテスト。クラスから2人出れるっちゅーので、沙良ちゃんは絶対として、なぜかクラス皆の意見でもう一人は私に。なんか『シンデレラ』らしい。意味は全くもって分からんけど。それで、その時のメイクを練習しとってオサムちゃんに見せて来いって皆に言われて、見せて、ついでにプリントよろしゅーってプリントもろうて。それで帰りに忍足先輩と…ってええ…!あの時の忍足先輩すごく、格好よかった。ほんとう、に!




「えーと、みょうじさん、でええ?」
「…え、え?」
「あ、なんか財前たちにって…居らんやん!」



声をかけられて、はっとなって顔を上げれば、制服姿の忍足先輩。驚いている私に説明しようと忍足先輩が横を向けば、すたこらと先に帰っておる財前君と沙良ちゃん。財前君は間延びした声で、そいつ送ったってくださーい、と言って、隣で沙良ちゃんがウィンクしながら手を振っとる。あ、沙良ちゃんそれもかわええ。って!!そうやなくて!



「あー、うん。とりあえず、帰ろうか?みょうじさん」
「あ、え、は、はい!」



笑顔でそう言うた忍足先輩に、返事をするけど、緊張して声が裏返った。うう、恥ずかしい。そう思っとれば、はは、と笑みをこぼしながら、



「自分、かわええなあ」



なんて、言うから。私はどうしていいか分からなくて。
忍足先輩は、行こう、と言うて、私にもう一度笑うた。








行こう、と言うた俺に、みょうじさんは嬉しそうに笑った。その笑顔が、探しとるあの子に似とった。…でも、そうかもしれへん。
部活中に見た時、整ってる顔しとるんやろうなあって思った通り、赤い縁の眼鏡をかけとって、一重以外は顔の造りは一緒の様に思える。髪の毛の色も長さも一緒やし、背も同じくらい。

ちゅーか、笑顔がかわいすぎで、あの子の笑顔に見とれた時と同じ感覚に陥った。
120730

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