君は誰 | ナノ

いつわりのきみでも



「…はああ…」



6組。それだけ絞れれば、見つかる。
そう思ったんに、見つからへんかった。1年6組、2年6組、3年6組。全員が居る状態で(朝のHR終わってから速攻俺が走って確認してきた)見たんに、居らんってどういうことやねん。それで、6組ってのは見間違いやったとしたら…ちゅーことで、結局全クラス見た。居らんかった。



「ううう…ほんまに、四天宝寺なんかな…」
「でも制服着とったんやろ」



それにこくりと頷けば白石は、あ、と思い出した様にカバンの中に手を突っ込んだ。そして突っ込んだ手でカバンの中をがさこそと何かを探し、そして、何かがあったのかこれや!とどんっと俺の机に置いた。ピンクの瓶で…マニュキアみたいな奴。



「なんなん?これ」
「これ、アイプチやねん。姉貴に借りた」
「あいぷち…?」


お姉さんに借りたというそれを白石は教えてくれた。
アイプチ。どうやら、一重の人が二重に憧れて人工で二重を作るものらしく。まぶたの上に液体を塗って、専用の棒とかでくいっと塗った部分を入れ込めば、糊でくっついたみたいにくっついて二重になるらしい。…入れ込むって怖いやん。つけまもそうやけど、女子ってそないことしとって、怖くないんか。



「で、そのアイプチがどうしたん?」
「やから、その子も、アイプチしとったとしたら?」
「…一重ってことか?」
「それだけやない。他のもメイクの可能性あるやん」



ああ、と俺は気付いた。そうか、メイクなら、見ても分からへんやん。
と、言うのも、うちの学校は基本的は校則は自由やけど、化粧は文化祭とかで異装届け出したりした場合とか、体育祭の応援のメイクとか。そう言うん以外は、普段はしとったらあかんってことで。たぶん、あの子は放課後やから、遊びかなんかでやっとたんやろう。




「他って例えば、どこが?」
「うーん、そうやなあ…」



そう言って白石はルーズリーフを出して、女の子の絵を描いた。…もしかして、これがあの子とか言うんか、こいつは。そう思っていれば、白石は目のとこに矢印で『アイプチ』と書いて、その下に『つけま?』『アイシャドウ?』『アイライン?』『マスカラ?』と書いて行く。




「ちょ、ちょっ待てや白石。俺かてメイクぐらいある程度ならぱっと見れば、分かるわ」
「…つけましとるぐらい?」
「つけまぐらいやったら分かるわ。ばっさばっさやん、あれ」
「…ほな、あの子、つけとった?」



そう聞かれて、俺は首を振った。その繰り返しで、ルーズリーフはいっぱいになった。新しく出したもう一枚に同じように女の子をかいて、清書の様に矢印で結果だけかいていく。


目のあたりの矢印は、『アイプチ、アイライン』
頬のあたりの矢印は、『チーク、ファンデ』
唇の矢印は、『グロス、または色付きリップ』




「…全部軽ーくやったあったとしても、結構雰囲気変わるもんやしなあ。それにな、謙也」
「ん?」
「お前が惚れた顔は化粧しとったんやで?このあと会えても化粧しんかぎり、好きになれへんかもしれんで」



そう白石に言われて、俺は何を言ってるんだこいつは、と思いつつ返す。



「確かに、一目惚れや。でも、俺が一番好きやって思ったんは、あの子が笑った時と、その仕草や。あれは、化粧しとっても、してへんでも、変わらん」



そう言い切った俺に白石は薄く笑みを浮かべて、最後まで付き合うたる!と言ってくれた。




120628
チークのせる前に軽くファンデしますよね??
化粧ろくにしないから分からない…

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